“高市流外交”特徴は?専門家2人が分析 一挙手一投足に見える”狙い”
政治|
11/01 22:30
韓国を訪問していた高市総理が帰国しました。就任早々、怒涛の外交日程をこなした高市総理。専門家が見た、“高市流”の外交スタイルとは。(11月1日OA「サタデーステーション」)
■韓国から帰国外交ラッシュ一区切り
午後8時すぎ、笑顔で飛行機に乗り込み帰路についた高市総理。
外交デビューウィーク最終日の11月1日。午前中に行われたAPEC首脳会議でも、各国首脳らと積極的に会話する高市総理の姿が目立ちました。午後は、カナダのカーニー首相や台湾の林APEC代表との会談を重ねました。
高市総理大臣(1日午後5時半すぎ韓国・慶州)
「中国、韓国という重要な隣国と率直な対話を行いました。トランプ大統領の訪日は日米同盟の新たな歴史を共に作り上げていくということを極めて明確に確認することができました。日本外交の地平を切り開いていく歩みを着実に進めることができた」
■握手や立ち振る舞いに”狙い”
そこでサタデーステーションは“高市流外交スタイル”を2人の専門家と検証しました。
政治アナリスト
ジョセフ・クラフト氏
「歴代総理、外務省は、ボディーランゲージは、特に握手の重要性というのは把握していますから」
ボディーランゲージと政治の関係性を研究するジョセフ・クラフト氏。
政治アナリスト
ジョセフ・クラフト氏
「ボディーランゲージで本音が見えたり、相手に本音の気持ちを伝える」
注目したいのは、この場面です。合意文書の署名式後に握手をする高市総理とアメリカ・トランプ大統領。一見、よく見る外交でのワンシーンですが…
政治アナリスト
ジョセフ・クラフト氏
「まずトランプ大統領は、ここを触ってきます。腕、二の腕を、『気に入っているよ』『仲良くしようね』とか、こういう意味合いの握手。高市総理はトランプ大統領に対して返すわけですね。これが大事です」
ちなみに、米中首脳会談でもトランプ大統領は同じしぐさを見せたものの、中国・習主席からの反応はありませんでした。
さらに、賛否が分かれた、あの場面にも狙いが…。
トランプ大統領(10月28日米軍横須賀基地)
「こちらの女性は…彼女こそ勝者だ」
高市総理は満面の笑みで登場し、トランプ大統領の言葉に合わせて、何度も大きく頷き、グッドサインも。「外交上ふさわしくないのでは」などといった批判の声も広がっていますが…
政治アナリスト
ジョセフ・クラフト氏
「日米の蜜月感、当然中国に伝わるということもある程度、計算ずくのうえで行っている」
一方で対照的だったのが、中国との初会談です。高市総理、習主席ともに表情は固く、握手の時間はわずか10秒。ここで注目するのは“距離感”です。
政治アナリスト
ジョセフ・クラフト氏
「これ距離が相当空いています。あくまでビジネスとして、毅然とした態度をとっているということ」
■SNS戦略にも“高市流”
元外交官の宮家氏は、こう評価します。
キヤノングローバル戦略研究所
宮家邦彦理事・特別顧問
「アメリカと中国との話し合い、交渉にも側面援助をしながら日中会談をやったという意味では、かなりうまくやったと思っている」
中でも“高市流”が光ったというのが…
高市早苗総理大臣(10月31日日中首脳会談)
「習主席とは、けさAPEC首脳セッションの前の控室で挨拶をかわさせていただきましたが」
高市総理がSNSに投稿した、その時の1枚。会談のときとは違い、お互いに目を合わせほほ笑んでいます。各国首脳との初対面をSNSに投稿していた高市総理ですが、習主席との写真には、“ある戦略”が隠されているといいます。
キヤノングローバル戦略研究所
宮家邦彦理事・特別顧問
「(習主席は)思わずほほ笑んじゃったんでしょうね。そこをすかさず見事に撮って、1番いいものをSNSにあげた。これは素晴らしい情報戦略」
中国国内に向けたメッセージとして、会談時の「表情」で相手国との距離感を示す習主席。日本に対しては「無表情」で臨んでいますが…
キヤノングローバル戦略研究所
宮家邦彦理事・特別顧問
「『ちょっと習さん笑っているじゃないか』というインパクトがあるし、もしこれが中国国内で出回れば、『なんだ?』というふうにとる人もいるかもしれない。そこを日本側は狙ったのだと思います」
宮家氏は、ここからが正念場だと指摘します。
キヤノングローバル戦略研究所
宮家邦彦理事・特別顧問
「中国側は色んな形でテストしてくると思う。尖閣の場合もあるでしょうし、水産物等々の問題もある。そのテストに耐えないといけないというのが高市政権の最大の対中関係の一番の懸案だと思う」
■レアアース日本外交の切り札に?
その対中外交の懸念材料の一つが、中国によるレアアースの輸出規制です。高市総理も習主席に直接懸念を伝えました。
高市早苗総理(10月28日日米首脳会談後)
「レアアースなんですけれども、日米ともにあまりにも特定国(中国)に依存しすぎている。(レアアース等)重要鉱物資源について、日米共同で一緒に力を合わせて開発をしていく」。
レアアースは、ハイテク産業や、グリーンテクノロジー産業に必須となるものですが、その生産は実質的に中国の独占状態です。それゆえ中国は、外交の取引材料として利用してきました。
高市早苗総理(10月28日日米首脳会談後)
「日本はご承知のとおり、南鳥島周辺海域にとてもたくさんのレアアース泥がございます」
都心から南東へおよそ1900キロ離れた南鳥島。その沖合、深さおよそ5500メートルの海底で、来年1月、レアアースの試験的な掘削が始まります。
東京大学大学院
中村謙太郎教授
「これは実際に南鳥島で採れたレアアース泥なんですけれども、この中に非常に多くのレアアースが含まれている」
13年前の2012年、南鳥島沖でレアアースを発見し、調査を進めてきた東京大学大学院の中村教授。この茶色い泥のようなものが、日本の未来を大きく左右しようとしています。
東京大学大学院
中村謙太郎教授
「(一部の海域だけで)レアアースの量として1600万トンくらいはあるっていうのを見積もっています。世界でも第三位とかそれくらいに匹敵するような量になっていて、(日本の年間消費量の)数十年分から、元素によっては数百年分くらいのレアアースが眠っている」
日本国内のレアアース需要は年間2万トン弱。単純に計算すると、一部の海域だけで800年分となるような膨大な量です。品質も世界最高クラスだといいます。
キヤノングローバル戦略研究所
宮家邦彦理事・特別顧問
「レアアースの問題は日中だけではなく、西側諸国全体に関わること。今のような形で中国が切り札を持ちそうな状況は変えていかなきゃいけない。(日本が)その中核になっていくことができれば、これは相当大きな外交的な資産になる」





