能登半島地震・豪雨災害から復活めざす “爪痕と生きる”食堂店主の1年
社会|
01/04 19:04
能登半島地震から1年。被災地に深い爪痕が残るなか、観光名所だった輪島朝市の復活に向けて立ち上がった食堂店主の男性を取材しました。
■“爪痕と生きる”食堂店主の1年
石川県輪島市、この正月の映像です。ここには、観光名所として知られた「輪島朝市」がありました。
紙浩之さん(55)
「全然、面影はない」
紙浩之さん、55歳。
紙浩之さん
「さすがに堪えたよ、この一年は」
紙さんは「朝市通り」で12年間、食堂を切り盛りしてきました。地魚をふんだんに使った料理が人気でしたが…。地震直後の火災で紙さんは食堂を失いました。
紙浩之さん
「こうやって探して、包丁が刺さっていたのを覚えている。あまりにもひどすぎて何も考えられなかった」
追い打ちをかけたのが9月の豪雨災害です。
紙さんの食堂を手伝っていた中学3年生の喜三翼音さんが亡くなりました。
紙浩之さん
「子どもが死んだのがつらいよ。自分の子どもじゃないけど、自分の店が燃えた何倍もつらかった」
翼音さんは、紙さんの食堂の向かいで輪島塗の器を販売する夫婦の孫でした。
紙浩之さん
「頑張っていた。配膳と洗い物だけだといってもなかなか出来ない。中学生で」
地震発生の前日まで手伝いに来てくれた翼音さん。
紙浩之さん
「胸が痛い。いまだに信じられない。本当、代われるものなら代わってあげたい。若い子が死ぬのはダメ」
翼音さんが亡くなった2カ月後。東京都内で開催された「出張輪島朝市」に翼音さんのアイデアが詰まった商品が並びます。カラフルなフクロウが描かれたマグカップです。翼音さんの祖父で、輪島塗の蒔絵師・喜三誠志さんが手掛けました。地震の後、「出張輪島朝市」で祖父を何度も手伝った翼音さん。
翼音さんの祖父
喜三誠志さん
「じいちゃんこれ良いね、可愛いね。でも翼音だったらこういうふうに描きたい。これだけじゃ寂しいからまず“2人”にすること、それからもっとかわいく明るい色にしてほしいと」
「Hanonカップ」と名付けられました。
紙浩之さん
「あの子のような感じのフクロウ。動物に例えるとフクロウみたいな感じ。翼音ちゃんがね。絵になったような感じ。優しい感じがする」
火災で食堂を失った紙さんはこの日、自宅で震災以来、初めて料理をします。
紙浩之さん
「店にアルバイトで来ていた子ども喜んで食べていた。まかないで食べさせていた。若い子の舌が肥えることはすごく大切」
12月、申請していた補助金が県からおり、200万円ほどの中古のキッチンカーを購入しました。輪島朝市の復活に向けて一歩ずつ前へ進みます。
紙浩之さん
「何とか輪島を盛り上げて、また復活させるという思いが強くなってくるのは嘘じゃない。どうしても、朝市復活して若い子につなぎたい。一回、心折れかけたけど、もう一回、頑張ってみようかな」