創業65年をむかえる豊前工業所。職人たちの技術を集結させて作り上げた「アームチェア」が話題の老舗鉄工所だ。
薄いフラットバーと鉄のみでデザインされた近未来的なアームチェアのクッションには「小倉織」を使用している。
その形はシンプルで、横から見ると宙に浮いているようにも見える。

これまでの豊前工業所は、鉄やステンレス、アルミなどの素材を使って大型設備の「ものづくり」を行ってきた。
しかしコロナ禍の時に、専務の井上慶一さんが「バーべキュー用の鉄板を作ってほしい」と妹さんから依頼を受け、実際に作成。
それが評判をよび、鉄の可能性を感じた井上さんは、これまでの大型設備以外に、デザインチェアも作るようになった。

井上さんのものづくりのコンセプトは「鉄の良さを広めたい」という思いだ。
一見、無機質にみえる鉄だが、関わり方次第では様々な表情を見せてくれるという。
試行錯誤の中で井上さんは「椅子のゆらぎ」を鉄に求めることにたどりつく。
「椅子のゆらぎ」を出すために、鉄板の薄さを追求し、ようやくたどり着いたのが「2ミリ」という薄さだった。

そんな井上さんが未来に残したい風景は「大富神社」だ。子供の頃からほぼ毎年、正月に参拝しているそうで、家族で親しんできた歴史のある神社だ。
小学校の時に神社の絵を描いて、賞をもらったことが良い思い出だという。
2025年のものづくりも、この大富神社から刺激を受けながら作り上げていくと、力強く話してくれたのが印象的だった。