【まちの宝】手にしたい食器棚の一番手前にある器!器をつくり、米を育てる。今では珍しい「半農半陶」の暮らしを受け継ぐ小石原焼の窯元『カネハ窯』(福岡・東峰村)【まち歩き】

福岡県東峰村、小石原。
山あいの道を進むと、田んぼと木々に囲まれた場所にカネハ窯がある。小石原焼の窯元のひとつで、代表を務めるのは熊谷裕介さん。工房のまわりには田んぼが広がり、季節によって景色が変わる。

カネハ窯が掲げているのは「半農半陶」。器をつくるだけでなく、米づくりも行う。窯元でありながら、農家でもある暮らしだ。
なぜ、カネハ窯は今もその形を続けているのだろうか。


■小石原焼が続いてきた理由

小石原焼は、約360年の歴史を持つ焼き物として知られている。産地が生まれた理由のひとつは、この土地で焼き物に向いた土が取れたこと。けれど熊谷さんは、土だけでは続かなかったと話す。
冬は雪が降る。仕事場を暖めるために薪を燃やすと、灰が出る。米を育てれば、藁が出る。その藁を燃やした灰と、木の灰と、長石。そこから釉薬(ゆうやく)ができる。

「このちっちゃい村で、材料から、技術から、最後まで作ってきた。それが360年続けてこれた根本だろうなと思ってて」。

土があり、水があり、米を育て、藁が釉薬になる。器は、工房の中だけで生まれているわけではなかった。


■農業が、土に向かう姿勢を変える

今、田んぼを続ける窯元は多くない。陶器市の時期と農繁期は重なり、農機具にも費用がかかる。焼き物だけに集中した方が、仕事としては効率がいい。

それでも熊谷さんは、米づくりをやめない。

農業は天候に左右される。豊作の年もあれば、災害で田んぼが傷む年もある。自分の都合だけでは動かない仕事だ。
一方で焼き物は、経験を重ねれば失敗が減っていく。技術が身につくほど、自分の手で作っているという感覚も強くなる。

「でも土がないとだめだし、この水がないとだめだし、最後は火の神様に預けて出来上がるものなんで」。

田んぼに立つことで、思い通りにならないものがあることを身体で知る。その感覚が、ろくろの前にも戻ってくる。
田んぼから戻った手で、また土を触る。効率だけでは説明しきれない往復が、ここにはある。

■食器棚の一番手前にある器

カネハ窯の器は、小石原焼の伝統技法である飛び鉋(とびかんな)や刷毛目(はけめ)を受け継ぎながら、今の食卓で使いやすい形に仕上げられている。グラタン皿や洋皿など、洋食器のように使える器も多い。

ギャラリーには、熊谷さんが手がけた器が並ぶ。皿、カップ、鉢、グラタン皿。皿は1,500円前後から手に取れるものもあり、普段使いの器として選びやすい。手に取ると、同じ形に見えても少しずつ違う。重さ、縁の厚み、指のかかり方。棚の前で立ち止まる時間が、自然と長くなる。

熊谷さんは、洋食器のように見えても、和食器としての感覚を残すことを意識しているという。平らに見える皿にも、手に持った時の厚みや、縁の収まりがある。昔の水瓶の縁を丈夫にする技術が、今の皿や鉢にも使われている。

「食器棚の一番手前にある器としてあってほしいなと思うし」。

食器棚の奥にしまうのではなく、毎日の食事で手に取る器。料理を盛ること、洗うこと、また棚に戻すこと。その動きまで考えられている。

カネハ窯では、器を選ぶだけでなく、陶芸体験も受け付けている。ろくろ、手びねりともに料金は3,300円から。実際に土に触れてみると、器の形が少し変わるだけで、手の動きも力の入れ方も変わることが分かる。
職人が何気なく行っているように見える作業の中に、積み重ねた技術がある。ギャラリーで器を見る時間と、土に触れる時間。その両方を通して、器ができるまでの距離が少し近くなる。
陶芸体験は、陶器市や農繁期などの繁忙期には実施していない場合もある。訪れる前に確認しておきたい。


■ここで過ごす時間まで、窯元の仕事にする

熊谷さんは、これからのカネハ窯についても話してくれた。娘さんは福岡のチョコレートショップでパティシエとして働いた経験があり、今後はカフェも構想しているという。さらに、一家族か二家族が泊まれるような場所も考えている。
敷地の裏には山があり、小川もある。夏にはきゅうりやなすを採って、その場で食べることもできる。陶芸体験だけでなく、農業体験や宿泊も含めて、この土地で過ごす時間をつくろうとしている。

「なんだかんだ言ったら、やっぱり自然ってすげえなと思って」。

工房の中で器ができる。外では米が育つ。夜には星が見える。
その一つひとつを切り離さずに、次の形へつなげようとしている。

■次の世代に渡すために

熊谷さんには、カネハ窯を100年続く窯元にしたいという考えがある。

息子さんも一度戻り、今は外で経験を積んでいるという。自分が60代になる頃には、前線を少しずつ次の世代へ渡し、田んぼや後方の仕事を担っていくことも考えている。

そのために必要なのは、技術だけではない。土を見抜くこと。田んぼを荒らさないこと。お客さんに自分の言葉で話すこと。SNSやAIも使いながら、仕事を続けられる形に変えていくこと。

「田舎でもおしゃれだね、かっこいいねっていうところを、きちんと作って渡していきたい」。

熊谷さんの話は、何度も土と米に戻った。
カネハ窯の器は、工房だけで完結していない。田んぼの水、山の土、薪の灰、手の感覚。
そうしたものを行き来しながら、一枚の皿になる。


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◼️『カネハ窯』
住所:福岡県朝倉郡東峰村小石原113
電話:0946-74-2203
営業時間:9:00〜17:00
定休日:不定休
駐車場:あり(無料・約8台)
SNS:Instagram:@kanehagama
https://www.instagram.com/kanehagama/
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※情報は2026年6月1日時点のものです。最新情報は公式HP、Instagram等でご確認ください。

■ カネハ窯

住所:福岡県朝倉郡東峰村小石原113
Instagram:@kanehagama

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