ホルモン&バターも入れとこ! 筑豊エリアの“ロードサイド味噌”「ポンポン亭 本店」 豚骨戦士 福岡のラーメンを斬る! VOL.59〜ふるさとwish 嘉麻市〜

福岡県嘉麻市「ポンポン亭 本店」の「みそセット」(1,100円)。写真はバター(50円)とホルモン(150円)をトッピングしたもの

福岡県内60市町村を巡り、各地で食べるべき一杯を紹介する本連載・ラーメンwishも残すところあと2回。いよいよラストスパートである。舞台は筑豊地方南部の嘉麻市。豚骨では「くんちゃんラーメン」という凄麺があるのだが、今回は同エリアで珍しい味噌といっておこう。創業約30年になる「ポンポン亭 本店」を紹介する。

まず、福岡における味噌ラーメン事情を少し述べたい。豚骨王国ではやはり、味噌で勝ち抜くことは容易ではないが、確実に地域に根ざしている名店もある。有名処でいうと、味噌ラーメン&焼飯を博多のソウルフード的存在にまで昇華した「川端どさんこ」、地鶏醤油から現在、味噌へ業態チェンジしている「はや川」、北海道・麺屋彩未の味に感銘を受け現地で修業した北九州「麺屋 玄」など。福岡の味噌ラーメン店は街中よりも郊外に圧倒的に多い。80、90 年代、どさんこを中心に福岡でも勢力を拡大した味噌。そのフランチャイズを外れ独自の路線を打ち出した「味噌哲」、同じく福岡東の「らぅ家」、さらに「彰膳」、行橋に目を向けると「みその屋」もファミリー層を取り込んだ“ロードサイド味噌”の好例であろう。ちなみに中心部の天神エリアでは、すみれ大名店や獅子王が閉店してしまったので選択肢が少ないが、個人的に「味噌蔵 ふくべぇ」を推す。味噌ラーメンはもちろん、味噌ダレを練り込んだ自家製餃子もバリうま!

ポンポン亭は優しい味噌。無料高菜&有料具材でカスタマイズ

「ポンポン亭 本店」の2代目・大脇謙治さん。チャーハンを舞わせる中華鍋の音が店内に響く

今回の主役に話を戻そう。嘉麻市の味噌ラーメン「ポンポン亭 本店」。筆者はここを訪れるのは2回目。取材で訪れた2008年以来、実に12年ぶりの再訪麺である。若かりし時の自分の写真にも驚いたが当時の記事を今も店内に飾ってくださっていて(感謝!)、それを見て記憶が呼び戻された。そうだった、ポンポン亭は“あっさり味噌”なのである。人気No.1の「みそセット」をオーダー。


スープは、よりまろやかになるようにと電解水で煮出した鶏ガラベース。そこに熊本県産の白と赤のブレンド味噌を溶かし込む。強烈なインパクトがあるわけではない。ひと口目は濃度的には少し物足りなさを感じるかもしれない。しかし、食べ進めていくとレンゲでスープをすくう手が止まらなくなる。ちょうどいい味噌の加減というのもあるが、大量の炒めモヤシ。これがいい。短くカットしてあるのでこんもりではないものの、炒めモヤシが約300g入り、シャキシャキとした楽しい食感が終始絡んでくる。担々麺の肉味噌もそうであるように、最後は底にたまったモヤシをすべてすくって食べたくなるのだ。

「ポンポン亭 本店」創業者の大脇善隆さん

「子供や年配の方も毎日食べたくなるような味噌ラーメンが作りたかった」と話す大脇善隆さん(1948年、嘉麻市、旧・稲築町出身)。「ポンポン亭 本店」の創業者である。大脇さんは32歳の時、それまでしていた仕事を辞め地元の名店「一番軒」(現在は閉店)の門を叩いた。「自分でラーメン店がしたいとなった時、豚骨一辺倒じゃおもしろくないと味噌を選びました。味噌ラーメンの人気店であった一番軒で数年修業させていただき独立。皆に親しんでもらえるよう屋号を考えていたら、タヌキを思いついたんです。かわいいタヌキのイラストを添えポンポン亭に」。大脇さんは老若男女食べやすい“優しい味噌ラーメン”を追い求め、味噌の種類や配合を研究し独自の改良を加えた。一方、ガッツリ派も満足させるため筑豊エリアといえばのホルモンや、納豆、バターなど追加トッピングも多数用意。豚骨店で定番の辛子高菜も味噌ラーメンに取り入れた。

遠賀川を横目に走る国道211号沿い。タヌキのイラスト看板が目印

「ポンポン亭 本店」は、大脇さんの四男である謙治さんが2代目として厨房に立つ。老舗ラーメン店で後継者が頑張っている姿を見られるのは嬉しい限りだ。

味噌ラーメンにも札幌式や、より強い焦がし味噌、和食のような繊細味噌系などさまざまなタイプがあるが、ポンポン亭はまた違った味わい。福岡で食べられる味噌ラーメンの一つとして体感しておくのもいいだろう。嘉麻市を車で走っていて、タヌキのイラストを見かけたら立ち寄ってみてほしい。



【ポンポン亭 本店】
住所:福岡県嘉麻市山野875-2
電話:0948-43-1579
営業時間:11:00〜16:00
休み:月曜
席数:14席
駐車場:共用20台

上村敏行(かみむらとしゆき)。1976年鹿児島生まれ。2002年よりラーメンライターに。以降年間300杯を食べ歩き「ラーメンWalker」はじめ各媒体での執筆活動、ラーメンイベント監修などを行う。KBC地域リポーター。

※この記事は2020年の情報です。内容は変更している可能性があります。事前にご確認ください。

ポンポン亭

住所:福岡県嘉麻市山野875-2
電話番号:0948-43-1579
営業時間:11:00〜16:00
定休日:月曜

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