関東 ダム水位低下でコンクリ露出 新米への影響 取水制限は?
社会|
09/03 20:23
関東のダムの水位低下。矢木沢ダムの貯水率は3割を切っています。新米への影響はあるのか、そして今後、取水制限はあるのか現地を取材しました。
■関東ダム水位低下
群馬県の最北端・みなかみ町にある「矢木沢ダム」。
そこで8月以降、急激に変化しているのが…。
水資源機構
木下貴博課長
「木々が生い茂っている所と地肌が見えている場所があるが、そこが矢木沢ダムの満水」
今、ダムの水位低下が心配な状況です。
雪解け水でいっぱいの満水時と比べると、水位は20メートル以上も下がり、コンクリートが大きく露出。並べると、その差は一目瞭然です。
5月中旬、梅雨入り前。設備が安全に作動するかを確認する年に一度の“点検放流”が行われたころからしばらくは「満水」の状態が続いていましたが…。貯水量のグラフを見ると7月以降から下がり始め、8月に入ると一気に平年を下回りました。
今月3日10時時点で貯水率は23.7%です。
水資源機構
木下貴博課長
「最大で(一日に)1メートルくらい水位が下がっている状況」
矢木沢ダムだけでなく、利根川上流にある他の8つのダムの傾向も似たような状況に陥っています。
■新米に影響は?
なぜ、急激に水位が低下しているのでしょうか。その訳を知るために訪れたのが、群馬県の矢木沢ダムから直線距離で200キロ近く離れた千葉県東庄町です。
一面に広がる田んぼ。そう、理由の一つはコメ作りにありました。
コメ農家の多田正吾さん(67)は、約80ヘクタールの広大な水田で「コシヒカリ」や「粒すけ」などのブランド米を作っています。
新米の収穫は、もうほとんど終わり。3日は、もみからもみ殻を取り除いて玄米に仕上げるもみすりを行っていました。
コメ農家
多田正吾さん
「ねじれば誰でも簡単に水を引ける。川に近くて水が豊富だから、こういうことができる」
多田さんのコメ作りを支えているのが「利根川」の「水」です。常に節水の意識はあったものの、今年は特に「多くの水を必要とした」といいます。
コメ農家
多田正吾さん
「なんか(暑くて)乾いちゃう。いつも以上に…(節水しても)水は倍くらい使っている」
史上最も暑かった夏。このエリアでは雨量も平年を大きく下回り、厳しいものとなりました。それでも平年通りに収穫できたのは利根川の水のおかげだといいます。
コメ農家
多田正吾さん
「新米はおいしいですよ」
そんな農家たちの頼みの綱が利根川の最上流にある「矢木沢ダム」なんです。
水資源機構
木下貴博課長
「局地的な雷雨はあるが、流域にまとまった降雨がないと(水の)補給を下流域にしないとまかなえない。ダムは今年よく活躍している」
■湖が…ワカサギ釣りピンチ
一方、水位低下が著しいのはダムに限った話ではありません。雨不足で窮地に陥っているのは冬の風物詩の魚です。
この夏も40℃台を2度経験した前橋市。関東平野を見下ろす赤城山の山頂付近には「大沼」「小沼」と呼ばれるカルデラ湖があります。そこでも雨不足による異変が…。
晴れていれば山々をきれいに反射する湖面が大きく干上がり、人が歩ける状態に。同じ場所とは思えない光景が広がっています。
小沼は湖畔の内側が大きく干上がり、現在は遊歩道を使わなくても1周できるほど。
前橋市内から来た人(30代)
「(水が)少ないと聞いたのでちょっと半周してきた感じ」
70代の人
「この中を歩くのは初めてなので」
特に問題なのは隣にある大沼です。
赤城大沼漁協
青木泰孝組合長
「水位は2.42メートルくらい下がっている。色が変わっている所が満水の場所。ありえない状況です」
訪れる人が、ひと目で異変に気が付く状況です。
赤城大沼漁協
青木泰孝組合長
「雨があまり降らなかった。例えば雷で水が急に増えることもあるが、今年はそういうのも一切ない」
影響は水位低下だけにとどまりません。
赤城山の大沼といえば氷上のワカサギ釣りが有名ですが、実は9月も「ボートワカサギ釣り」が解禁されるため、多くの釣り人が訪れます。そんな釣り客たちも異変を感じていました。
釣り客
「朝からずっとやって全然、釣れていない。すぐいなくなっちゃう」
「(Q.何匹釣れている?)今12匹。全然、駄目です」
実際に去年の解禁日は最大260匹釣った人がいましたが、今年は1番が91匹だったそうです。なぜ、釣れなくなったのでしょうか。
赤城大沼漁協
青木泰孝組合長
「水深5メートル、25.2℃。魚(ワカサギ)は住めない状況」
実際に水温を測ってみると、26.4度で止まりました。かなり高いです。
青木組合長によりますと、湖は深い所は酸素がなく、湖面近くは暑さの影響で水温が高くなっている状況。広いエリアを群れでゆっくり泳ぐワカサギですが、水位低下に加えて活動範囲が狭まることで単独で行動し、動きが早まるため釣りの難易度が上がるといいます。
今後、ダムや湖の水位はどうなっていくのでしょうか。
気象予報士
今村涼子さん
「関東ではコメの収穫シーズンに入ったたので農業用水などの水需要は減って、大きくダムの水が必要な時期は過ぎている。ですので、取水制限など私たちの生活に大きな影響が出る心配は現段階ではなさそうです。ただ、あすから続く雨の予報も局地的、かつ短時間の雨なので、ダムの水位を一気に上げるような雨はしばらくなさそうですし、今年の暑さは例年よりも長引きそうですので、少なくとも今月いっぱいは日々の節水を心掛けるなど警戒が必要です」