職人泣かせの木が生まれ変わる 家具の町の職人が挑む新商品
福岡|
10/04 17:00

かつてシイタケ栽培に不可欠だった「クヌギ」は、重く、かたく、加工が難しい木と言われています。このクヌギを資源として活用しようと、家具の町・福岡県大川市の職人たちが立ち上がりました。専門技術を結集し、クヌギの短所を長所に変える新商品開発。山の問題を解決し、未来へと循環をつなぐ挑戦に迫りました。
■「軽くて表層がかたい商品を」

家具の町として知られる福岡県大川市。市内の工場では、職人たちが木材の加工作業に励んでいました。
「クヌギの板を貼っているところです。下は、スギのパネルです」と語るのは、このプロジェクトの発起人である植木林業の植木正明会長。かたいが重い「クヌギ」と、軽いが柔らかい「スギ」。それぞれの長所を組み合わせ、「軽くて表層がかたい商品を作りたい」というアイデアからこの挑戦は始まりました。
■シイタケ栽培で活躍したクヌギはいま

クヌギは本来、原木シイタケを栽培するための「ホダ木」として重宝されてきました。密度が高く、シイタケの菌が安定しやすい特徴があるからです。しかし、近年はシイタケ生産者の減少に伴い、クヌギの利用も減ってしまいました。
「クヌギそのものが、用途がホダ木以外にはなかった」と植木さんは言います。重くて扱いにくいため、大きく育ちすぎたクヌギは活用されないままになっていました。「『大きくなりすぎたクヌギを何かに使えないか?』とあちこちで聞いたんですね。それじゃあ大川の専門分野を結集すれば、ものになるんじゃなかろうか」と植木さん。家具の町の技術力に活路を見出しました。
■「スルメを焼いた時のようにねじれる」クヌギとの格闘

しかし、クヌギの木材利用への道は平坦ではありませんでした。広葉樹のクヌギは幹が曲がっているものが多く、製材が難しい。さらに、そのかたさから製材所の職人からは「クヌギは扱いが難しい」「今まで取り扱ったことがなかった」との声もありました。
最大の難関は乾燥工程。植木さんはクヌギの扱いにくさを「じゃじゃ馬」と表現します。「(クヌギは乾燥させると)スルメを焼いた時のようにねじれる。あっち向きこっち向きで、平らなものができない」。このねじれを制御する高度な乾燥技術こそが、プロジェクトの成功の鍵を握っていたのです。
■専門分野の連携で生まれた新天板

製材、乾燥、そして板加工。それぞれの分野の職人たちが試行錯誤を重ね、連携することで、高品質なクヌギの「突き板」が完成しました。突き板をスギに貼り合わせる工程を担う内田ツキ板の堤律佳社長は「今までクヌギを扱ったことはなかった」と明かします。加工が難しい木材でしたが、植木さんたちが持ち込む平らなクヌギ材は「とても貼りやすい」と驚きます。
「見た目もすごくきれいな木目で、これが日本の木っていうのがすごく誇らしい」と笑顔を見せる堤さん。「クヌギの製品作りの手伝いができるんだなと思って、ワクワクしてるところです」
■重さ半分以下 子どもたちのための「クヌギの机」
数々の困難を乗り越えて完成したサンプル品は、学校の机。表面はかたいクヌギで傷がつきにくく、中は軽いスギ。もし天板をクヌギだけで作ると約4.9kgになりますが、新製品は約2.4kgと半分以下の重さで、子どもでも扱いやすいです。
「子どもたちにも肌で木を感じてもらえるように」と、最初の製品化に学校の机を選んだ理由を植木さんは話します。視線はさらにその先、山の未来を見据えています。「木は使わなければ意味がない。植えて育てて使ってまた植える。寿命の前に活用する流れを作っていく」。この挑戦は、山に新たな命を吹き込み、持続可能な循環を生み出すための大きな一歩なのです。







