【わざわざ行きたい店】知らなかった!?感動のお米を選び体験「お米選びは暮らし選び」!創業100周年で生まれ変わったお米屋さん『田中米穀』がスゴイ!(福岡・大木町)【まち歩き】
福岡県三潴郡大木町。
筑後平野のまんなか、堀がめぐる田園の町に、大正時代から続く米屋があります。
『田中米穀』。
創業は1923年。2023年に、めでたく100周年を迎えました。
引き戸を開けると、ふわりとお米の香り。ガラス越しには大きな精米機が並び、奥にはコーヒーを片手にひと息つけるスペースがあります。木の温もりのある店内に、子どもがごはんを頬張る姿のロゴマーク。流れているのは、スーパーのレジ音とはまったく違う、ゆっくりとした時間です。
『田中米穀』は「お米屋さん」と聞いて思い浮かべる景色を、いい意味で裏切ってくれる場所でした。
案内してくださったのは、社長の娘である横山絵梨さん。店頭に立ちながら、お米の魅力を伝えています。
■お米が、目の前で白くなっていく
この店のいちばんの特徴は、精米の工程がガラス越しに見えること。改装の設計を手がけた方からの提案だったといいます。
「コーヒーの焙煎所みたいに、精米しているところが見えたら面白いよね、って。お米って、最初から白いと思っている方も、意外と多いんですよ」
玄米が機械に吸い込まれ、白くなって出てくる。当たり前のようでいて、ほとんどの人が一度も見たことのない光景です。
買ったお米が、目の前で白くなっていく。それを見ているだけで、いつものごはんが少し特別なものに思えてきます。
玄米で買えば、その場で精米してもらえます。しかも精米したては、香りも味も格別。スーパーの棚に並ぶお米とは、スタートラインが違うのです。
■「今日はどんなお米がいいかな」を、相談できる
店内には、無料のコーヒーやお茶を飲めるスペースも。買い物のついでに一杯いただいて、ゆっくりお米を選ぶ——そんな時間の使い方ができるお米屋さんは、なかなかありません。
「ゆっくりしながら選んでもらえたらいいなと思って。お茶をお出ししながら、お客さんとお話しできる場所にしたかったんです」
絵梨さんは、三ツ星お米マイスターの資格をお持ちです。取り扱うお米は、大木町をはじめ筑後平野で採れたものが中心。
ヒノヒカリ、元気つくし、夢つくし——初めての方には、まずこのあたりをおすすめしているそうです。
こだわりのある方には、全国から選んだ栽培中農薬不使用・減農薬のお米も用意されています。
「もちもちが好きな方もいれば、どちらかというと固めが好き、さっぱりが好きという方もいる。それを伺いながら決めていきます。品種によって味も食感も全然違いますし、炊き方でも変わってくるので」
「なんとなくいつものお米」を買っていた人ほど、この会話は新鮮です。自分や家族の好みを言葉にしてみると、ぴったりの一袋を選んでもらえる。食べ比べてみたくなる楽しさが、ここにはあります。
■お米だけじゃない。もち粉という名物も
お米に加えて、ごはんのお供、米油、米粉など、お米にまつわる商品もずらり。小さなお子さんがいるご家庭を意識して、添加物の少ないものを選んで並べているそうです。
そして忘れてはいけないのが「もち粉」(1.5kg税込1,200円)。
「30年くらい前から人気のある商品なんです。次の日になっても柔らかくておいしいと言っていただいて。この間は岐阜県の方から『送ってほしい』とご連絡をいただきました」
お盆の時期には、お団子を作るために買いに来る地元の方も多いのだとか。
遠くにファンがいて、季節になると訪れる人がいる。そんな看板商品です。
■カラフルなお団子で、夏の食卓が楽しくなる
取材にうかがった日、絵梨さんが用意してくださっていたのが、もち粉のお団子を使ったカラフルなあんみつでした。
もち粉で作ったお団子を、かき氷のシロップでほんのり色づけ。赤や黄色、緑のお団子が器の中にころんと並ぶ姿は、見ているだけで気持ちが弾みます。もちもちの食感に、あんことシロップの甘さ。夏休みのおやつに、これ以上ないごちそうです。
うれしいのは、これがおうちでも簡単に作れること。もち粉をこねて丸めて、好きな色をつけるだけ。お子さんと一緒に「何色にする?」と話しながら作れば、それだけでちょっとしたイベントになります。次の日も柔らかいもち粉だからこそ、慌てずゆっくり楽しめるのも魅力です。
「食べられればいい」と思っていたお米が、家族で囲む時間そのものに変わる。この店のお米ともち粉には、そんな力があります。
■この店は、ある帰国から始まった
いまでこそ若い世代も足を運ぶこの店ですが、かつては倉庫の一角にある小さな販売スペースでした。
「父たちの世代の方には『大木町にお米屋さんがあるよね』って言っていただけるんです。でも、私くらいの世代になると、お米はスーパーで買うもの、ネットで買うもの。町にお米屋さんがあること自体、知らない人が多くて」
「若い人のお米離れ」という言葉は、ニュースの中の話ではなく、この店の日々そのものでした。
転機は、弟さんの帰国でした。大学卒業後、海外の農業を学ぶためオーストラリアへ留学していた弟の田中宏治さんは、コロナ禍の2020年に帰国。四代目として家業を継ぐことを決意します。帰国後すぐに農業用ドローン操縦の資格を取得し、そして次に動いたのが「この店を、新しくしたい」という一歩でした。
若い人も入りやすい店へ。
当初は工場、物販、事務所をそれぞれ分ける案もあったそうですが、店のブランディングそのものを見直し、大きな建具で間仕切るひとつの空間へと方向を切り替えました。
精米の工程が見えるガラス張り、コーヒーを飲めるスペース、新しいロゴとパッケージ。こうして2023年、いまの田中米穀が生まれました。
■「支えたい」から、店の顔へ
店ができあがっていくと、今度は誰かが常にそこにいなければなりません。そこで自然と店に立つようになったのが、絵梨さんでした。
「弟があれだけ頑張っているので、姉として支えたいなと思って。自然な流れで、私も店に立つようになりました」
実はご本人、以前は「まさか自分がここまで家業に関わるとは思っていなかった」と言います。
結婚して子育てをしながら、ときどき実家を手伝う程度。それがいつの間にか、店の顔として、初めて訪れた人にお米の話をするようになっていました。
「携わるうちに、気持ちがどんどん変わっていったんです」
リニューアル後、店の風景は大きく変わりました。以前はもち粉ばかりが売れていたのが、今はお米のほうが動く。
久留米市内や福岡市内から、わざわざ足を運ぶ方も増えました。発信しているのはInstagramくらいで、あとは口コミで少しずつ広がっていったといいます。
取材のあいだにも、何人ものお客さんが引き戸を開けて入ってきました。小さな子どもを連れた方の姿も。
「小さい子が来てくれるのが、すごくうれしいんです。前のお店だったら、そんな若い子は来なかったので」
■次の100年へ、続いていく
最後に会長・社長・次期社長3世代で並んた写真を撮らせていただきました。
田中米穀の始まりは、絵梨さんのひいおばあさまが営んでいた小さな精米所でした。
米づくりが盛んな土地で、まず精米の需要があった。そこから小売へとかたちを変えながら、祖父の代で大きくなり、今に至ります。いまでは大木町に4ha以上の農地を持ち、自社での米づくりから乾燥、精米、販売までを一貫して手がけています。
会長である祖父は、今年90歳。その願いは、とてもシンプルです。
「絶やしてほしくない。ここを潰さないようにしてほしい」
お米屋さんという業態そのものが、少しずつ姿を消しつつある時代。
「なるべく何年も、また100年、次の世代へ。スーパーじゃなくて『お米屋さん』という存在を、なくさないようにしていきたいんです」
創業100年を迎えたその年に、店は新しく生まれ変わりました。
次の100年は、もう始まっています。
新しくなった店の二階には、昭和初期から使われてきた精米機や脱穀機が、今も静かに眠っているそうです。
もう直せる職人はいないそう。それでも残されているところに、この店が積み重ねてきた時間の厚みを感じました。
古いものを大切にしながら、次の世代が新しい扉を開けていく。100年続いてきた理由は、案外そういうところにあるのかもしれません。
大木町へ足を運ぶことがあれば、ぜひ立ち寄ってみてください。
コーヒーを一杯いただきながら、精米されていくお米を見つめて、今日いちばんおいしい一袋を選んでもらう。
持ち帰って炊いたそのごはんは、いつもよりずっとおいしく感じるはずです。
お米を「買いに行く」のではなく、「選びに行く」。そんな週末が、少し楽しみになる場所です。
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■田中米穀
住所:福岡県三潴郡大木町大字福土784
電話:0944-32-1310
営業時間:8:00〜17:00
定休日:日曜・祝日
Instagram:@tanaka.beikoku
https://www.instagram.com/tanaka.beikoku/
Web:https://www.tanakabeikoku.com/
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※情報は2026年7月時点のものです。営業時間・定休日は最新情報をご確認ください。
■ 田中米穀
住所:福岡県三潴郡大木町大字福土784
Instagram:@tanaka.beikoku
『田中米穀』HP
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