【わざわざ行きたい店】週末金・土・日のみ!直方・門前町の路地裏に佇む長屋に灯る小さなパン屋『cloud9(クラウドナイン)』からはじまるまちづくり物語(福岡・直方市)【まち歩き】

◼️パンの香りに導かれて

直方市の旧門前町エリア。車を停めて歩き出すと、どこからともなくパンの香ばしい匂いが漂ってきます。その香りに誘われるように路地を進むと見えてくるのが、酵母パンの店『cloud9』(クラウドナイン)です。

店があるのは、直方の空き家を活用したまちづくりの拠点「リノベのまち門前」の一角。周辺には雑貨店、不動産屋、建築事務所、占いなど、さまざまなジャンルの店や事業が少しずつ集まっています。
今回は、オーナーの清水さんと店長の山田さんに、パンづくりへのこだわりや、直方でまちづくりに取り組む思いを伺いました。


◼️楽健寺酵母で焼く、もちもちのカンパーニュ

『cloud9』のパンの味を決めているのは、「楽健寺酵母」(らっけんじこうぼ)と呼ばれる少し珍しい天然酵母です。奈良・東光寺の元住職の和尚さんが、自身の喘息をきっかけに考案したとされる酵母で、人参、長芋、りんご、ご飯などを使って育てるのが特徴です。

清水さんたちがこの酵母に出会ったのは、パン屋を始めるよりもずっと前のこと。もともと足踏み健康法である楽健法を学んでいて、その先生が毎回、楽健寺酵母で作った食パンを持ってきてくれていたそうです。
「おいしいパンだということは知っていたんです。でも、まさか自分たちが作ることになるとは思っていませんでした」。

体の外側から整える足踏み健康法と、体の内側から整える酵母パン。そんなつながりもあり、『cloud9』ではこの酵母を使ったパンづくりに取り組んでいます。
店で焼かれているのはフランスの田舎パンとして知られるカンパーニュですが、使われている素材や酵母の背景には、日本らしさが詰まっています。
小麦粉に対してたっぷりの酵母を使うため、生地は一般的なパンよりも扱いが難しく、試行錯誤の連続だったそう。清水さんも山田さんも、どこかのパン屋で修行を積んだわけではありません。レシピを見ながら、焼いて、失敗して、また考えて。自分たちが「おいしい」と思える味を目指してきました。

写真上:看板商品の「カンパーニュ cloud9」(1,200円税込)。 写真下:左から「ソルト&スパイス」(400円税込)、「トマト&チーズ」(1,200円税込)、「黒糖メロンパン」(300円税込)

看板商品は、酵母の個性を一番ダイレクトに感じられる大きなカンパーニュ。もちもちとした弾力があり、焼きたては食パンのようにやわらかく、トースターなどで焼き戻しをすると表面がバリッと、ハード系の食感に変化します。3〜4日ほど寝かせると、パン内部の水分が生地に馴染み、味が深くまろやかになり、変化を楽しめるパンです。

◼️築60年の空き家が、温もりある店へ

この場所の面白さは、パンだけではありません。建物は築約60年の空き家を改装したものです。
「もともとは、玄関を入ると畳の部屋がある普通の家でした」。
大家さんの「好きにしていいよ」という言葉をきっかけに、清水さんや山田さん、仲間たちが自分たちの手で少しずつ改装していきました。

現在パンが並ぶ場所は、もともと居間だったところ。店内を明るくするために壁に窓を開けるなど、できるところは自分たちで手を加えてきました。新しいものをできるだけ使わず、譲り受けた古い建具や使われていなかった素材を生かしながら、温もりのある空間に仕上げています。

扉を開けると、どこか懐かしく、肩の力が抜けるような空気が流れています。焼きたてのパンの香り、古い建物の風合い、そこに集まる人たちの会話。パンを買う時間そのものが、ひとつの小さな旅のように感じられます。

◼️教育からまちづくりへ。cloud9に込めた思い

オーナーの清水さんは、もともと博多を拠点に教育や人材育成、コミュニケーションに関わる事業を行ってきました。保育やフリースクール、講座運営を経て、少しずつ芽生えていったのが、「まちづくりをやってみたい」という思い。そんな時、もともと縁のあった直方で、空き家を活用しながら暮らしや仕事をつくっていける場所と出会いました。

雑貨屋を始め、シェアハウスを立ち上げ、空き家を改装し、そして今度はパン屋へ。
会社の事業内容だけを見ると一見ばらばらに見えるかもしれませんが、根っこにあるのは「その人らしく生きられる場所をつくる」という思いです。

店名の『cloud9』は、英語で“この上ない幸せ”を意味する言葉。雲の中でも天に一番近い場所、という意味もあるそうです。困難を抱えながらも、自分の特性やよさを見つけて生きていく。そんな願いを込めて名付けられた会社の名前が、パン屋の名前にもなりました。

◼️地域に受け入れられ、少しずつ広がる輪

直方に移ってきた当初、周囲にうまく受け入れてもらえるのか不安もあったそうです。しかし、この町の人たちは驚くほどウェルカムでした。
かつて商店街としてにぎわっていたこのエリアには、商売をしていた人も多く、「懐かしいわ、にぎやかでいいね」「やりなさい、やりなさい」と背中を押してくれる声があったといいます。今では近所の高齢者と話をしたり、買い物を手伝ったり、一緒に掃除をしたりと、店と地域の関係も少しずつ育っています。

一方で、この場所は直方市内の人にもまだあまり知られていない場所。一本路地を入った先にあるため、たどり着くのに迷う人も少なくありません。それでも、何度も探してようやく来店したお客さんが、笑いながら扉を開ける。そのエピソードからも、この店が持つ不思議な吸引力が伝わってきます。


◼️何もなくても、意欲があれば始められる場所に

『cloud9』が目指しているのは、単なるパン屋ではありません。シェアハウスには国内外から人が泊まりに来て、この町での営みを学び、自分の地域でもコミュニティをつくりたいと帰っていく人もいるそうです。

「何でも試してみられる場所にしたいんです。お金がない、人がいない、場所がない。できない理由はいろいろありますが、それでも“やってみたい”という気持ちがあれば、何かは始められると思っています」。

その言葉の通り、『cloud9』には、できない理由を探すよりも、まず一歩踏み出してみる。そんな前向きな空気が流れています。

清水さんたちは今後、アパートや空き部屋を活用して、移住や複数業に関心のある人たちを受け入れていく構想も持っています。果樹園づくりの話も出ており、このエリアはこれからさらににぎやかになっていきそうです。
週末だけ開く小さな酵母パンの店『cloud9』。パンの香りに誘われて扉を開ければ、もちもちのカンパーニュと、直方で新しい暮らしをつくる人たちの物語に出会えます。直方を訪れた際は、ぜひ足を運んでみてください。

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◼️『門前町にある小さなベーカリー cloud9』
住所:福岡県直方市直方338
電話:090-5459-8490
営業時間:11:00〜16:00
営業日:金・土・日のみ
定休日:月〜木曜
駐車場:無料駐車場あり
Instagram:@c9_monzen
https://www.instagram.com/c9_monzen/
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※情報は2026年6月19日時点のものです。最新情報は公式HP、Instagram等でご確認ください。

■ 門前町にある小さなベーカリー cloud9

住所:福岡県直方市直方338
Instagram:@c9_monzen

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