「日本は、とても多様な国なんです」
そう話すのは、世界的に権威のある旅行雑誌「TRAVEL+LEISURE」で、世界で22位に選ばれた、マレーシア・クアラルンプールの超高級ホテル「EQクアラルンプール」のCEO、ドナルド・リムさん。
2026年6月、EQクアラルンプールを中心に「47in27」が始まりました。これは27か月かけて日本の47都道府県を巡る食文化プロジェクトです。
その最初に選ばれたのが九州・沖縄の「食」でした。なぜ、九州・沖縄だったのか?なぜ、マレーシアで日本食が人気なのか?
現地で話を聞くと、その背景には「日本の地方にもっと光を当てたい」という想いがありました。
■「日本」ではなく「地域」を知ってほしい
「47in27」は、マレーシアの老舗日本食レストラン「Kampachi(カンパチ)」とホテルグループ「Equatorial Group」が手がける長期プロジェクトです。
期間は27か月。
その間に日本全国47都道府県の食や文化、風土を紹介していきます。
日本をテーマにしたイベントは海外でも珍しくありません。
しかし47in27がユニークなのは、「日本」という一括りではなく、それぞれの地域に焦点を当てていることです。
「私たちも長年、日本のプロモーションをやってきました。ただ、紹介されるのは有名な地域が中心でした」
そう語るリムさん。
続けてこんな言葉を口にしました。
「日本は本当に多様な国です。私たちもまだまだ日本について学ぶことがあります」
北海道、東京、京都。
海外の人がイメージする日本には、どうしても有名な地域が並びます。
一方で、その陰にはまだ十分に知られていない地域がたくさんあります。
47in27は、そんな地域にもスポットライトを当てる挑戦でもあるのです。
■北海道ではなく、まず九州から
興味深かったのは、プロジェクトの順番です。
47in27では、日本列島を南から北へ巡っていく構成が採用されています。
つまり、北海道からではありません。
九州・沖縄からスタートするのです。
「北海道はすでに多くのマレーシア人が知っています」
リムさんはそう説明します。
だからこそ、まずはまだ知られていない地域から紹介したかった。
それが九州・沖縄だったのです。
もちろん、北海道や東京が特別扱いされているわけではありません。
むしろ逆です。
有名な地域だけでは語れない日本の魅力がある。
だからこそ、まずは多くの人がまだ知らない地域を紹介したい。
そこに47in27の考え方が表れています。
■マレーシアだからこそ共感できる「多様性」
リムさんの話を聞いていて、何度も出てきた言葉があります。
それが「多様性」です。
「マレーシアも非常に多様な国です。だから私たちは違いがあることの面白さを理解できます」
マレー系、中国系、インド系をはじめ、多様な文化や宗教が共存するマレーシア。
食文化も地域ごとに大きく異なります。だからこそ、福岡と鹿児島が違うこと。長崎と宮崎が違うこと。
それぞれの土地に独自の文化があること。
そうした地域ごとの個性に自然と共感できるのかもしれません。
日本人にとっては当たり前のことでも、海外から見ると魅力的な違いとして映っている。
そんな視点に気付かされました。
■福岡との意外な縁
実はリムさんには福岡との縁もあります。
福岡を訪れたのは2019年のラグビーワールドカップのとき。
その際に福岡や大分を訪れた経験が強く印象に残っているそうです。
さらに、EQグループにはもうひとつ福岡とのつながりがあります。
それがラーメン店「一風堂」です。
EQグループはマレーシアで一風堂を展開しており、その創業者である河原成美さんは福岡出身。
リムさんはこう話します。
「河原さんのビジョンは、ラーメンを世界へ広げることでした。今では世界最大級のラーメンブランドになっています。そう考えると、福岡は世界のラーメン首都と言えるかもしれません」
少し誇らしそうに語る姿が印象的でした。
■地域の価値は、地域の人には見えにくい
今回の47in27は、単なる食イベントではありません。
日本大使館やJETRO、航空会社なども関わりながら、日本の地域文化そのものを伝えようとしています。
リムさんはこうも話していました。
「私たちのホテルを訪れる人は、27か月の中のほんの短い時間しかこのプロジェクトに触れません。でも、その体験が新しい発見になり、もっと知りたいと思うきっかけになれば嬉しい」
食べて終わる。
見て終わる。
そんなイベントではなく、その先にある地域への興味を育てたい。
それが47in27の目指すところ。
47in27は今後も27か月をかけて、日本全国を巡っていく予定です。
今回の九州・沖縄編でも、料理だけでなく、その背景にある文化や人、地域の物語が紹介されていました
海外から見ると、私たちが当たり前だと思っている食や風景も、新鮮な魅力として映るのかもしれません。
そして2026年9月からは、マレーシア航空による福岡―クアラルンプール線の直行便就航も予定されています。
これまで以上に九州とマレーシアの距離が近くなる中で、現地の人たちがどんなふうに九州や日本を見ているのか、実際に足を運んで感じてみるのも面白そうです。
マレーシアで始まった47都道府県の旅。
その最初の舞台のひとつに九州が選ばれたことは、私たちにとって少し誇らしく、そして地域の魅力をあらためて見つめ直すきっかけになるのかもしれません。
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