一期一会の本とコーヒーのために何度でも通いたい。日常に寄り添う「街の本屋」が紡ぐ暮らしと出会い『MINOU BOOKS』(福岡・久留米市)【まち歩き】

久留米市小頭町の静かな一角に、本屋とカフェが融合した『MINOU BOOKS 久留米』がある。2023年6月にオープンしたこの店は、うきは市吉井町の本店に続く2号店だ。店主の石井さんが大切にしているのは、「暮らしの本屋」というテーマ。衣食住からアートブックまで、日常に彩りを加える本を丁寧にセレクトしている。

■本を「手に取る」体験を、もう一度

店内に足を踏み入れると、明るい木製の棚と白い壁、そして植物が織りなす心地よい空間が広がる。無機質と有機質が絶妙に調和したこの場所で、石井さんが何より大切にしているのは「本を手に取る」という当たり前の体験だ。
「本屋って、何度か通ううちに自分の好きなものやお店の特徴が分かってくるんです。それは初めて行く洋服屋と同じで、どこに何があるか、どんな雰囲気かを感じ取っていく。そういう経験が今の時代大切だと思うんです。ブラウザ上じゃなくて、リアルな店舗だからこそ、実際に本を手に取ってページをめくって、目で追う。そういう体験をしてほしいんです」。
その言葉には、個人商店としての本屋が持つ本質的な価値への確信が込められている。

■無意識に手が伸びた一冊が、自分を映す鏡

個人書店ならではの魅力は、偶然の出会いにある。大型書店とは異なり、店主のセレクトによってギュッと凝縮された空間では、無意識に手が伸びた本が「今の自分」を映し出す鏡になる。
石井さんは、本屋を通じて何かを伝えたいという思いは特にないと語る。どう読み取るかは、お客さん次第。「これを読めばこうなれる」といったメッセージ性は出さないようにしているという。
「本は、自分の手で取り、目で見て、頭で考えて理解する。全部自分でやらないといけないメディアなんです。自分で一から積み上げたものは、長いスパンで残っていきます」。

■カフェ併設が生む、新たな出会い

『MINOU BOOKS』が本屋とカフェを併設しているのには、明確な理由がある。それは、本屋に気軽に足を運んでもらうためだ。
「本に興味がなくても、コーヒー一杯飲みに来ようかなって。来たときに『こんなお店があるんだ』と知ってもらって、本に触れてもらえたら」。
トークイベント、読書会、ワークショップ。様々な企画を通じて、本と人、人と人をつなぐ。特に読書会では、同じ本を読んでも解釈が全く違うことに気づく面白さがあるという。
「本を読んで、それを言葉にして誰かと共有すると、自分の理解度が分かるんです。相手の理解と全然違ったりして、『あ、こういう読み方もあるんだ』って気づくことができます」。
一杯のコーヒーから始まる本との出会い、人との対話。そんな豊かな時間が、ここにはある。

■久留米市という街で、「街の本屋」を実現する

うきは店に続く2号店として久留米市を選んだ理由。それは、もともとやりたかった「街の本屋」を実現したかったからだ。
うきは店は多くの方に愛され、週末には遠方からも人が訪れる店へと成長した。一方、久留米店では日常に寄り添う「街の本屋」として、地元の方々が何度も通える場所を作りたいと考えた。同じ『MINOU BOOKS』でも、それぞれの街の個性に合わせた形で、本との出会いを提供している。
「久留米の人は地域愛がすごく強いんです。市役所の人も、市民団体も、自分の地域のために何かやりたいという意識が高いと感じます。地元が好きな方が本当に多いです」。
久留米市では、8月頭の「水の祭典久留米まつり」に向けて、6月末から7月末の毎週土曜日に「久留米ほとめき通り商店街 土曜夜市」が開催される。アーケードに多くの店が出て、毎週末たくさんの人で賑わう。地域に根差した祭りと、それを支える人々のエネルギーがある街だ。
取材を通じて感じたのは、久留米市という街が持つ文化的な豊かさだ。多くの芸能人や詩人を輩出してきたこの街で、『MINOU BOOKS』は読書会やトークイベントを通じて、地域の文化を育む拠点として機能している。個人書店が地域に根を張り、新たな出会いを生み出していく。その可能性を、この店は静かに示しているように思えた。

■「暮らしの本」が紡ぐ、35人のストーリー

店内には『MINOU BOOKS』オリジナルの書籍『暮らしの本』が並ぶ。2025年9月に発刊されたこの本は、10周年の節目に作られた初めての出版物だ。店に関わってきた35人の書き手に「暮らしを形づくる一冊」を紹介してもらい、その思いを綴った書評エッセイ集となっている。
様々な分野で活躍する執筆者が名を連ねており、「読書の悦び」「暮しの指針」「わたしの生き方」「自然のなかで」「日々を問いなおす」「他者と共に生きる」「暮らしと平和」という7つの章で構成され、それぞれの立っている場所から見える暮らしの景色が描かれている。

※詳細はMINOU BOOKSのオンラインストアにて

コーヒーを一杯飲みに、ふらりと立ち寄る。ページをめくり、思いがけない一冊と出会う。久留米市の日常に溶け込むMINOU BOOKSは、何度でも通いたくなる、暮らしに寄り添う場所だ。

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■MINOU BOOKS 久留米
住所:福岡県久留米市小頭町10-12 1階
電話:0942-64-8290
営業時間:11:00~19:00(LO18:30)
定休日:火曜
Instagram:@minoubooks
https://www.instagram.com/minoubooks/
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■ MINOU BOOKS 久留米

住所:福岡県久留米市小頭町10-12 1
Instagram:@minoubooks

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