オレンジ色の屋根が目印の『レストラン チムニー』は、1976年創業、今年で49年目を迎える地元で愛され続ける老舗レストランです。
店名の「チムニー」は英語で「煙突」の意味。かつては実際に店の屋根に煙突があったというこの店は、まるで絵本の中に出てくるようなヨーロッパの佇まい。扉を開けると、落ち着いた照明と木のぬくもりが感じられる空間が広がります。
■後世に残したい伊万里の隠れた名店
西九州自動車道の開通により、福岡からのアクセスが格段に良くなった伊万里。店主の林文弘さん(70歳)は「西九州道ができてから、県外からのお客様が本当に増えました。福岡のお客様には『この値段でこのクオリティ?本当にいいんですか?』と驚かれることが多いんですよ」と笑顔で語ります。
確かに、「伊万里牛ハンバーグセット」は税込1,980円、「伊万里牛レモンステーキセット」は税込3,300円〜と、福岡の同等店舗と比べても驚くほどリーズナブル。「仕入れ量を増やしてコストを抑え、その分をお客様に還元しています。一度きりではなく、何度も来ていただきたい。リピーターになっていただくことが私たちの喜びなんです」という林さんの想いが、この価格設定を支えています。
実際、週末のランチタイムは予約で満席になることも多く、開店と同時に予約客で店内が埋まる人気ぶり。初めて訪れる際は、事前に予約をしておくのがおすすめです。
■町おこしから生まれた「伊万里牛ハンバーグ」
看板メニューの伊万里牛ハンバーグは、実は町おこしプロジェクト「伊万里食三昧」から生まれました。2010年頃、伊万里市と地域の飲食店が協力し、伊万里の魅力を全国に発信するために開発されたこの一品。地元の肉屋が一括製造する統一パテを使用。玉ねぎを茶色になるまで炒めるなど、細かい仕様まで統一されています。品質を保ちながら、ソースや盛り付けは各店舗が独自に工夫するというスタイルで、「伊万里牛ハンバーグ」というブランドを守り続けています。
こだわりは「つなぎを一切使わない」製法。一般的なハンバーグには卵やパン粉などのつなぎが使われますが、このハンバーグには一切入っていません。「卵アレルギーのお子様でも安心して食べられるように」という想いから、牛肉の部位選定、練り方、練る時間を細かく調整。何度も試作を重ねて完成させた、伊万里牛100%の旨味がダイレクトに感じられる、他では味わえないハンバーグです。デミグラスソースも、3ヶ月かけて肉汁やブイヨンを継ぎ足して作った自家製。深いコクと複雑な味わいが、ハンバーグの美味しさを一層引き立てます。
開発にあたっては、参加店舗と肉屋が週に1〜2回集まって会議を重ね、試食会を何度も実施。「各店舗を回って勉強会をしたり、真空パックのサンプルを持ち寄って食べ比べたり。本当にみんなで頑張りました」という林さんの言葉からは、当時の熱意が伝わってきます。
■もう一つの看板メニュー、レモンステーキ
長崎・佐世保発祥のレモンステーキも、この店の名物。林さんの師匠が佐世保の老舗レストラン『門』で修行していた縁で、チムニーのメニューに加わりました。伊万里牛のヒレ肉を使った薄切りステーキを、生レモンを皮ごと使った特製ソースでいただく爽やかな一品は、女性客にも大人気です。
■3世代で通う、地域に根ざした店
「70代のおばあちゃんグループから、若いカップル、親子3世代まで、本当に幅広いお客様に来ていただいています」と林さん。特に印象的なのは、3世代で来店するお客様の姿。
「子供の頃に親に連れられて来たお客様が、今は自分の子供を連れて来店されるんです。『昔、ここでハンバーグ食べたよね』って話しながら食事されている姿を見ると、本当に嬉しくなります」。
落ち着いた店内は、デートにも家族でのお祝いにもぴったり。壁には地元の人間国宝・井上萬二氏(有田焼の白磁人間国宝、故人)が生前に描いてくれた皿や、著名人のサインが飾られています。「サインはあえて色紙ではなく、お皿に書いていただいているんです」という林さんのこだわりが、店の個性を際立たせています。
■75歳まで現役を目指す店主の想い伊万里の未来
後継者不在という課題を抱えながらも林さんは前を向いています。「常連のお客様から『もったいない』『まだ頑張れ』と言われるんです。50年を目標にしてきましたが、今は75歳まで続けたいと思っています。やっと一人前に見ていただけるようになった今、もう少し頑張りたい」。
伊万里牛ハンバーグのプロジェクトには、レストランだけでなく寿司屋や焼肉屋など、様々な業態の店が参加しています。「若い人たちとも連携して、このパテを使っていろんな料理に応用できないか試作しています。伊万里の食文化を、もっと多くの人に知ってもらいたいんです」。
林さんの想いは、単に自分の店を続けることだけではありません。地域全体で伊万里の食の魅力を発信し、次世代に繋いでいくこと。それが、半世紀近くこの地で商いを続けてきた林さんの使命だと感じているのです。
■伊万里を訪れたら、ぜひ立ち寄りたい一軒
福岡から西九州自動車道で約1時間。伊万里焼の里として知られるこの街には、歴史と文化、そして美味しい食が溢れています。
肉汁溢れる伊万里牛ハンバーグ、爽やかなレモンステーキ、そして林さんの温かい笑顔。地域に根ざし、3世代に愛され続けてきた味には、伊万里の歴史と人々の想いが詰まっています。
デートで、家族で、友人と。どんなシーンでも心地よく迎えてくれる『レストラン チムニー』。伊万里を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。
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■『レストラン チムニー』
住所:佐賀県伊万里市立花町3321-1
電話:0955-23-0515
営業時間:12:00〜14:00 / 17:30〜20:30
定休日:木曜(不定休あり)
■ レストラン チムニー
住所:佐賀県伊万里市立花町3321-1
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