
竹と、まちと、ひとと。「Coffee923」が紡ぐやさしい循環(小竹町)【ふるさとWish】

まさに、“竹を最後まで楽しみながら使いきる” ことをテーマにした、やさしい循環のプロジェクトが、福岡県小竹町で展開中。
竹林を整備して、切り出した竹は夏のそうめん流しに使われ、夜には灯籠としてやさしい灯りをともす。やがて炭になり、コーヒーを焙煎する火となる──。
一本の竹が、いくつもの形に生まれ変わりながら、人と人をつなぎ、日常に彩りを添えていく。小竹町では、そんなあたたかな循環が、静かに、でも確かに育まれています。
今回お話を伺ったのは、Coffee923(コーヒークニさん)の國房雅之さん。福岡市出身で、かつては市内でカフェを営んでいたそうですが、祖父母の家が「お試し移住施設・こたけ創造舎」として生まれ変わったことをきっかけに、小竹町とのご縁が始まりました。

「特産品がなくて困っている」という地域の声を聞き、ふと思ったのが「竹を使って何かできないか」ということ。それが、國房さんの挑戦のはじまりでした。そうして生まれたのが、「竹炭焙煎 こたけ珈琲」だそうです。
手づくりの灯り、竹灯籠のぬくもり
コーヒーと並んで、國房さんが力を入れているのが「竹灯籠づくり」。
ワークショップでは、参加者が自分の手でドリルを使い、竹に模様をあけていきます。最初は戸惑いながらも、少しずつ夢中になっていくのが面白いところ。
「3〜4個くらい作っていただいて、そのうち1つはお持ち帰り用。あとの灯籠は、イベントで使わせてもらっています」
竹灯籠はLEDライトを入れて安全性にも配慮。イベント会場に並ぶと、やさしい灯りがあたりを包み込み、どこかほっとするような空間が生まれます。今年12月にはクリスマスマーケットとあわせて、大規模な点灯イベントも計画中だそうで、電気自動車を電源として活用するアイデアも検討しているとのこと。竹を通じて、環境にもやさしい循環が広がっています。

ピンク色のコーラ? それが「923コーラ」
國房さんの活動は、まだまだ広がります。次にご紹介いただいたのは、クラフトコーラ「923コーラ」。なんと、ほんのりピンク色をしているんです。
「これ、色付けしてると思われるんですけど、実は着色料は使っていないんですよ」
その秘密は、小竹町の特産品であるクロダマル(黒大豆)のきな粉や、本物のコーラの実、5種類のスパイス、そしてレモン。素材の力だけで仕上げたこのコーラは、スパイシーでほんのり甘く、あと味はすっきり。大人も楽しめる味に仕上がっています。

そして、これから。
國房さんは2024年まで、隣町・直方市の観光協会でイベントの企画・運営に携わっていましたが、2025年からは再び小竹町を拠点に活動中。店舗は構えておらず、イベントに出店されたり、自らイベントを企画されています。
現在、國房さんが準備を進めているのが、クラフトビールの製造。
地元の特産品を活かし、たとえば自身で焙煎したコーヒーを使った、しっかりと苦味の効いたビールなどを構想中です。

福岡県内の醸造所で、設備を借りながら少量ずつ仕込むスタイルを予定しており、ラベルデザインには地元作家との連携も視野に入れながら、地域とのつながりを大切にした展開を目指されています。
竹炭焙煎のコーヒー、手づくりの竹灯籠、クラフトコーラ。どれも、小竹で生まれ、小竹で育ってきたものばかりです。國房さんの手から生まれるものは、どれもどこかあたたかくて、まちと人をやさしくつないでくれる存在のように感じました。
これから先、またどんな取り組みが生まれていくのか──。その一つひとつを、楽しみに追いかけていきたくなる、そんな時間でした。
【Coffee923】國房雅之さん(福岡県小竹町)
Instagram@923.coffee
https://www.instagram.com/923.coffee?igsh=aTdnZWNqeHA4MmUz