【淑女のご褒美手帖 1頁目】フレンチレストラン『KOGISHI』(福岡市東区)


福岡市東区照葉。福岡市の中心部から少し離れたこの近未来都市に、わざわざ足を運びたいフレンチレストランがあります。

2023年11月にオープンした『KOGISHI』。

博多『オーグードゥジュールメルヴェイユ博多』で一つ星を獲得し、「ななつ星in九州」でも腕をふるった名シェフ・小岸明寛さんが満を持して開いたお店です。フランスの名だたる三つ星レストランで研鑽を積み、NY、モナコ、スペイン、スイスと世界を渡り歩いたのちに帰国。そんな華々しい経歴の持ち主が店を構える地に選んだのは、福岡で著しい成長を遂げながらも自然を感じられるアイランドシティの一角でした。

海風を感じながらドアを開けると、そこは小岸さんの“美術館”。
「料理の世界に没頭していただけるように」と、白とシルバーで統一された、一点の曇りもないインテリア。そこに小岸さんが“描く”料理が運ばれてくると、巨匠の絵画が目の前に飾られるような感覚に陥ります。


【アミューズ(ムツゴロウのクラッカー/ナカシマファーム「水田のチーズ」/(手前皿左奥から)パテクルート、イカ明太ご飯、コハダのマリネ、サーモンとイクラのタルト、ビーツのジュレとフォアグラ)「イカ明太ご飯」はせんべいのような薄い生地の中にイカのマリネとお米のクリームを詰めて明太子を乗せたもの。魚の火入れも1℃単位でこだわっている。】

出身地である佐賀県太良町のミカンや有明海のムツゴロウなど、使う食材の7割は九州産。ミシェル・ブラス氏との出会いで、“料理は自然の中に生まれる”という信念に心動かされたという小岸さん。その一皿一皿から漂う食材へのリスペクトと郷土愛、そして何よりお客様に最高の一皿を届けたいというたぎる情熱が、私たちをふるえるほどの感動の渦へと引き込んでいきます。


【熊本産馬肉のタルタル。上のキャビアは宮崎産。】

例えばアミューズ、馬肉のタルタルに続く前菜。小岸さんの代名詞「九州の大地」。

ミッシェル・ブラス氏の「ガルグイユ」を、小岸シェフが“筑前煮”に昇華させたスペシャリテです(九州外から来られたお客様にシェフがそんな説明をするそうですが、あくまでも“小岸ジョーク”笑 …進化しすぎた筑前煮です。)

中央にはシェフが太良町の『シャルキュティエ田嶋』と共同開発した佐賀県産の生ハム。野菜はその日の状態に合わせて、蒸す、焼く、ゆでるなど素材によって調理法を変え、カットする大きさにこだわり、さらにピューレにしたり、ソースにしたりと、気の遠くなるような作業を一つひとつにほどこします。この一皿にかける仕込み時間は10時間以上。使う食材は80種以上。

ハーブやエディブルフラワーが時に顔を出し、口に運ぶたびに違う味が押し寄せ、食べたことがあるはずの野菜でも新鮮な驚きを覚えます。いつもは不快にさえ思う苦みや土の香りも心地よく、次に来るのはなんだろう?と最後の一口までワクワクしていました。

納得のいく「ガルグイユ」を提供するために食材探しの手間を惜しまない小岸シェフ。農家に直接出向き、自分の舌で味を確認することはもちろん、サイズにもこだわり、口に入れた時の心地よさも追求しているそうです。例えばズッキーニは13センチ、ニンジンは早い段階で収穫した小さめサイズ。「規格外をあえて選ぶこともあります」と小岸シェフ。自らの創作意欲に突き動かされながら、たった一皿の完成のために、フルコースに匹敵する労力と時間を注いでいます。


【まるでお花畑のような一皿】

ランチはこの後、魚料理、肉料理と続き、デザート2皿、食後のドリンク&プチガトーまで全8~10品。驚きと感動に満ちた2時間半のランチは、スマホのフォルダに収めなくとも、鮮やかな記憶として残るでしょう。


【オマール海老とホタテのムースを重ね、ちりめんキャベツで巻いた魚料理。モチーフはシャガール。周りのカラフルな色合いは、すべてソースだ。青はバタフライピーのエキスを抽出している。もしかすると2万円は安いのでは…?と思わずにはいられない。】

【シャトーブリアンは低温でじっくりロースト。中央にトリュフのソース。周りは根パセリを使った白いソースで、さわやかさをプラス。ニンジンを薄くスライスして階段状に積み上げるなど、付け合わせにもシェフの手仕事が光る。】

【デセール2種。左は桜のブラマンジェ、お米のアイス、ゆずのシャーベットなど。右は「オペラ」を再構築したもの。さまざまな柑橘類が使われている。】

【食後のドリンクと一緒に出されるプチガトー。半球体はチョコレートで、黄色がオレンジ、青が塩キャラメル、赤がコーヒー、緑が抹茶とシソ。フィナンシェに使っているハチミツは、シェフの実家で採れたものだそう。中央はほうじ茶のカヌレ。】

【おいしい料理は会話も弾む。添えられたパンは「パンストック」に特注している。】

そのお値段から「敷居が高そう…」「怖そう」と感じる方もいらっしゃると思いますが、大丈夫。お店には、ほのかに温かい居心地の良さが漂っています。30年前、料理人を志し、作ったお菓子を友だちに食べてもらって喜ばれるのが最高にうれしかった小岸少年。その気持ちを変わらず持ち続けているシェフと、超一流のサービスを提供するスタッフの方々に、安心して身を委ねてください。

『KOGISHI』は誰をもわくわくさせてくれるレストランなのですから。

『KOGISHI』
福岡市東区照葉6-3-12 プライムメゾン照葉クロススタイルWEST1
092-692-6666
(ランチ)12:00~14:30(一斉スタート/完全予約制)
(ディナー)18:00~21:00 or 18:30~21:30(一斉スタート/完全予約制)
水、第1・3火曜定休
Instagram@kogishi2023
https://kogishi.net/

※ランチ22,000円、ディナー28,000円/38,000円/55,000円
※コース料金と別途、サービス料(10%)頂戴いたします。
※同じお席のお客様は同じコスメニューをお選びください。
※ご利用可能年齢 小学校6年生以上(大人と同じメニューになります)
※ドレスコードはございませんが、ショートパンツやサンダルなどの軽装でのご入店はご遠慮申し上げます。

【小岸明寛プロフィール】
1979年10月31日生まれ
佐賀県太良町出身
辻フランス校卒業後、ラムロワーズで研修し、帰国。
東京、恵比寿のシャトーレストラン「タイユヴァンロブション」で働き、再び渡仏。
『アランデュカス・オ・プラザアテネ』『ピエール・ガニェール』『ミシェル・ブラス』で働き、NY、モナコ、スペイン、スイスで研鑽後、帰国。『ピエールガニェール ア トーキョー』を立ち上げ、『ミシェルブラス・トーヤ・ジャポン』在籍中にRED U-35初代準グランプリ受賞。福岡市内の料理長を勤め、ミシュラン一つ星獲得。ヒトサラベストシェフ&レストラン、食べログフレンチ100名店に選考。

その後、フリーランスとなり、JR九州クルーズトレインななつ星などと業務提携。
2023年レストランKOGISHI をオープン。
『ゴ・エ・ミヨ2024』掲載。
現在に至る。


 

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