絶対食べんしゃい!齢50年を超える“大牟田ラーメン”の代表格「福龍軒」 ふるさとWish 大牟田市 ~年間300杯! 豚骨戦士 福岡のラーメンを斬る!VOL.15~
真っ平らな網に、灯油炊き。古の豚骨ラーメンに感動
豚骨王国福岡県のラーメンは博多、長浜、久留米ラーメンだけではない。県最南の大牟田市もまた“大牟田ラーメン”が根付く、麺ファン垂涎の場所である。鹿児島を除く九州の他エリアの豚骨と同じく久留米が源流、または岡山県から伝わったなど、大牟田ラーメンの発祥には諸説あるが、昭和20、30年代、炭鉱の町としての発展とともに花開いた。現存する大牟田最古のラーメン店は「東洋軒」(昭和26年創業)。そして、東洋軒で働いていた池田高さんが昭和38年に独立開業したのが、今回の主役「福龍軒」である。
大牟田にはさらに、夜専の「銀嶺」(ここも筆者は惚れ抜いている)という名店も。「東洋軒」「福龍軒」「銀嶺」が“大牟田ラーメン御三家”といえるだろう。
「福龍軒」は56年の歴史がある。創業者の池田高さん(81歳)、奥さまのツナ子さん(78歳)とも現役だが、メインで厨房を仕切るのは息子の健さん(42歳)。18歳から店に入り、父の背中を追っている。
「幼い頃は継ぐ気はなかったのですが、両親の大変そうな姿を見ていると自然と厨房に入るように。父から学んだ技をそのままに、何にも特別なことはしていないですよ。当たり前のことを毎日変えずにして、いつ食べても同じ味の豚骨ラーメンを作っているだけ」と謙虚に話す健さん。
カウンターに座ったら、ぜひ健さんが操る麺上げ網を見てほしい。見事に真っ平! 近年主流のテボ網、カーブを描く網よりも、この“平網”はひっかかりが全くなく、扱うのが難しい。手首のスナップが要。「麺は大きな釜で泳がした方が旨いですから」と話す健さん。鋭い眼差しで茹で加減を見極め、手際よく麺をすくっていく。そして、釜の縁に打ち付け「カン、カン!」と湯切り。
驚くべきは、麺の硬さの要望が異なる複数玉を泳がせている時も、正確に1玉分をすくうことだ。「この網しか使ったことがないですから」と健さんは、ひょうひょうと話すがまさに職人技である。
そして、未だ燃料に灯油を使っているのも特徴。厨房内はガスだが、奥のスープ室には灯油バーナーの強い火力で炊く巨大な羽釜が据えてある。
「豚の頭はじめ全身の骨をしっかり下処理してから旨味を抽出。ラードなど余計な脂はいっさい加えません。ガスより強力な灯油バーナーを使っているのも父の製法を変えたくないから」と健さん。
スープを口に含むとふくよかな甘味、程よい塩気を感じる。とにかくバランスがすばらしい。博多ラーメンより太めの角麺が絶妙にスープをまとい、心地よく喉を通っていく。豚バラチャーシューも柔らかく絶品。スープでチャーシューをボイルし、醤油煮汁がカエシ(元ダレ)となるため、上質な豚肉の旨味が詰まっている。
福岡最南端のラーメン処・大牟田市の豚骨はレベルが高い。
足を伸ばして啜る価値はある。
【福龍軒】
住所:福岡県大牟田市不知火町1-6-10
電話:0944-52-8756
営業時間:11:00~LO19:00
休み:月曜、他不定休あり
席数:60席
駐車場:20台
※この記事は2019年の情報です。内容は変更している可能性があります。事前にご確認ください。