人生100年時代を生きるヒントが多数!「健康オタク」が集まる町 ~ふるさとWish久山町~
ジムで熱心に運動をする久山町のお年寄り
4月10日(水)に放送されたKBCのニュース番組「シリタカ」の「ふるさとのチカラ」コーナーでは、福岡県久山町の健康への取り組みについて紹介しました。
町の3分の2が山林で、田園風景が広がる久山町。人口は約9000人で、平日の昼間はほとんど人を見かけませんが、午前10時前、とある建物には続々と人が入っていきます。そこは「ヘルスC&Cセンター」。中へ入ってみるとエアロビクスが行われており、よく見るとお年寄りが目立ちます。
ここには、町が運営するスポーツジム「ピアジェフィットネス」があり、週3回、1回300円(エアロビクスは500円)とリーズナブルに利用できることから、多くの方が訪れています。「体力づくりで15~16年通っている」と話す町民もいて、皆さんが熱心に通っていることがわかります。ジムの健康運動指導士の柳川 真美さんによると「フィットネス(の営業日)や運動を優先して、他の用事は運動に来ない日に入れるという人も結構います」と語るように、町民の健康に対する優先順位の高さがうかがえます。
“健康”への高い意識は「久山町研究」の成果
では、なぜ久山町のお年寄りはこんなに健康への意識が高いのでしょうか?フィットネスで77歳の町民の方が「健診のあと、指導があるので」と答えていたことが、その秘密につながります。実は、久山町では年に1回、無料で健康診断を実施。最大23項目に及ぶ検査は、“人間ドッグ並み”と言われています。
これほどまでに、健康について徹底しているのには理由が。久山町は1961年から、九州大学とともに40歳以上の人の健診データを収集・分析する「久山町研究」というものを実施してきました。引っ越しなどで町を出た人にも引き続き調査を行い、追跡率はなんと99%以上というから驚きです。この調査は、世界的にも珍しい継続研究として注目を浴び、大きな成果を上げています。町民はそのような環境から、自分の健康状態をきめ細かく知ることができるため、徐々に“健康オタク”になっていくのです。
久山町健康課の持松 可奈子さんによると「最初は、脳卒中の撲滅を掲げて健診が始まった」そうで、実際に町民の脳卒中発症率は大幅に減少しています。一方で、最近では糖尿病予防や認知症予防を健康課題として捉え、健診を進めているそうです。
健康を維持して「豊かにぼけたい」
NPO法人「やまぼうし」の今任 志津子さんは、4年前に久山町のお年寄りを対象にした「認知症予防カフェ」をスタートさせました。スタッフは約20名の町民ボランティア。看護師や調理師免許を持つスタッフもいるため、血圧測定や健康相談もできます。取材に訪れた日には、お年寄りのみなさんが折り紙を楽しんでいました。知り合いがいなくて参加しても、このカフェで友達ができるといいます。約2年前から参加している76歳の女性は「家にいたら化粧もしない。やっぱり出かけると違う」と、このカフェが活力につながっていると話してくれました。
昨年の参加者はのべ700人以上という、認知症予防カフェ。この数からも、「健康は自分たちでつくる」という意識が町民のみなさんに根付いていることがうかがえます。今任さんは「保健に携わっている人たちも一緒に何かをしましょうとなり、保健に対する町民の意識がとても強くて助かっています。“豊かにぼけたい”“楽しくぼけたい”と思っていますね」と語ってくれました。
コストコやトリアス久山など、福岡都市圏郊外の商業施設があることで知られる久山町ですが、実は鉄道もないため、移動はマイカーが中心。普通は運動不足になりがちですが、“健康オタク”を増やすことで、町の活力を維持しています。九州大学が独自で調べた指標「一人あたりの持続可能な豊かさ」では、久山町は福岡県内でなんと1位でした。人生100年時代を生き抜くヒントが、“健康オタクの町”久山町にはたくさんありそうです。