福岡県東部に知る人ぞ知る名豚骨あり!「満福ラーメン」 豚骨戦士 福岡のラーメンを斬る! VOL.57〜ふるさとwish 築上町〜
福岡県の東部、築上町の国道10号を豊前方面へ走っていると赤い看板が目を引く「満福ラーメン」が現れる。周辺は田園が広がるのどかなロケーション。国道と平行する日豊本線を青い車体のソニックが颯爽と走っていく。車で通っていてもそうだが、きっと電車の中からチラリと見て、広い駐車場が満車となったこのロードサイド店のことを気になった人もいることだろう。いかにも旨そうなラーメンを出している佇まいである。
カウンター越しにうかがえる丁寧な手仕事
店に入ると、麺場で平網を操るご主人の様子がカウンター越しに見られる。大鍋で麺を泳がせてすくい、網の上でシャシャと踊らせる。そして鍋の縁に網を打ち付けるガンッという湯切りの音。横では焼き飯が舞い、重厚な鉄鍋で餃子がジュジュワリ。いわゆるイニシエ食堂は、レトロな雰囲気だけでなく、そういった音まですべてがそそられるエッセンスとなる。さらには、シンプルなメニュー表にショーケースに並ぶ純白おにぎり。はい、申し分なし!
「満福ラーメン」は1989年創業。現店主は、父から店を継いだ2代目・小畑登さん(1973年築上町出身)である。「父はもとトラック運転手で大のラーメン好き。なかでも惚れ抜いていた『珍竜軒』の門を叩き、修業の末独立したんです。父が体調を崩したため、私は23歳の時から店を手伝うように。それまで料理は未経験でしたし、父も“見て盗め”的な感じだったので当時は苦労しましたね。平網など昔ながらの道具を珍しがられますが、私はこれしか扱ったことがないので、そんなに特別感はないです」と照れながら話す小畑さん。ラーメンのビジュアル、味の方向性、卓上の薬味“赤コショウ”も、源流である北九州の大御所・珍竜軒のスタイルであることは間違いないが、「満福」は、親子での継承の過程でまた違った魅力をもつようになった。「ラーメン作りにのめり込むほど気付かされたのが、豚骨スープは生き物であるということ。同じ材料、製法で作っても人により違う味わいになるんですよね。それならば自分なりの一杯を突き詰めようと」。小畑さんは父の味の軸はブラさずに、骨の下処理の仕方や炊き方など、さりげない変化をほどこした。2代目の宿命ともいうべき「先代と味が変わった」という意見に悩まされた時期もあったが、自分の信じるラーメンを貫いた結果、古くからの常連も戻り、さらには新しいファンも多く獲得している。
先に挙げた麺茹での手法もそうだが、小畑さんはとても丁寧にラーメンを作っている。スープの材料は豚のゲンコツがメイン。血抜き、アク取りを徹底し、目の細かい網でしっかりと濾す。さらにチャーシューは余分な脂を削ぎ落とし、みずみずしさを損なわないよう切り置きはしない。そのほか、注文時にあり・なしが選べるニンニクもフレッシュさにこだわり、生ニンニクを随時ジューサーにかけたものを使っている。
臭みがなくコク深いスープが、博多ラーメンより太めの麺とよく絡み、モヤシ、手切りネギの食感もいいアクセントに。塩気と甘さのバランスのいい豚骨ラーメンだ。
テッパンのサイドメニューは焼き飯。卵を使わず、細かく刻んだニンジン、タマネギ、チャーシューの具材を加え、パラフワに炒めてある。
「満福ラーメン」は福岡市街より車で1時間20分ほど。
行橋や豊前、中津方面へのドライブ途中にぜひ寄ってみてほしい。
【満福ラーメン】
住所:福岡県築上郡築上町石堂404-3
電話:0930-56-5413
営業時間:10:30〜19:00
休み:月曜
席数:20席
駐車場:30台(無料)
上村敏行(かみむらとしゆき)。1976年鹿児島生まれ。2002年よりラーメンライターに。以降年間300杯を食べ歩き「ラーメンWalker」はじめ各媒体での執筆活動、ラーメンイベント監修などを行う。KBC地域リポーター。
※この記事は2020年の情報です。内容は変更している可能性があります。事前にご確認ください。