町一番の“愛され店”に密着。見えてきた人気の理由は深い人間愛だった…～ふるさとWish粕屋町～

粕屋町で「町のうどん屋さんというと、どこですか？」と尋ねると、みな口を揃えて名前を挙げるほどの人気を誇るのが「官兵衛うどん」。JR長者原駅近くの街道沿いにある、いたってフツーのうどん屋さんです。

町のうどん屋といえばここしかない！

しかし、よく見るとシャレの利いた看板にはじまり、麺とスープに竹炭やイカ墨をブレンドした「くろだビックリうどん（820円）」などが有名で、さまざまなメディアにも登場する人気店です。

そんな「官兵衛うどん」を切り盛りするのは、小川豊さん（68歳）。実はこの小川さんの接客こそが店の名物。

「今日が初めて？ウチは初めての人はタダやけん」、「週に4日は来とうよね？」など、小川さんは常連だけでなく一見客にも、とにかく話しかけます。

「地域に溶け込もうと思って。積極的に声を掛けることで、地域につながっていくんですよ。そうした日々が、地元で愛される今日につながっていると思います」と小川さんは笑います。そう、何より小川さんが大切にしているのは、地域との“つながり”であり、“ふれあい”なのです。

1977年10月にオープンして以来、早朝7時から出汁を取り、帰宅するのは22時過ぎと、ひたむきに働いた42年。今では常連客でいっぱいになるうどん店となった「官兵衛うどん」の魅力は、「39年前から通っています。地域に根ざそうとする店長の人柄に惹かれて…」、「カレーうどんがおいしくて。それから一筋！違ううどんを食べると店長に今日はどうしたと～？って言われるんですよ」という、常連客の言葉が教えてくれました。

最高の温もりを届ける“ふるさとの顔”

小川さんに惹かれたのは常連客だけはありません。店内で黙々と麺打ちを続けるアメリカ人のロブ・コロノフスキーさん（42歳）も、元は通っていたお客さんの一人。小川さんの温もりに触れ、12年前から麺づくりを任される“助っ人”になったといいます。今では、「店長は時々、うどんの作り方を忘れちゃうんですよ」とロブさんが笑えば、「彼の方がはるかに良いもん」と小川さんが笑う、そんな和気あいあいとした雰囲気こそが、「官兵衛うどん」の日常になっています。

小川さんの人となりを垣間見たのは、配達先での出来事。「こんにちは～！」と玄関先で声を掛けるとそのままリビングへ向かう小川さん。注文のうどんを食卓に運んだあと、自らお客さんの財布からお金をいただいています。思わず「え？」と衝撃を受けるスタッフ一同。しかし、「長年の付き合いやけん」と笑うお客さんと、「お父さんは手が痛むし、奥さんも具合が悪くてね」という小川さんのやり取りに、築き上げられた確かな「信頼」を感じ、小川さんの地域での存在に気づかされます。

「週に一回、うどんを頼むのが楽しみ」という養父雅人さん（72歳）も、「ずっと一人でいるから、来てもらって、いろんな話をすることでストレスがとれる」と小川さんの存在に助けられているという一人。地域のどんな人のところにもうどんと共に、温かい言葉も届ける小川さんの姿勢は、一朝一夕では成し得ない、「真のやさしさ」なのです。

「今日、合格発表やったと～」と笑顔満開で訪れた女子高生たちを、「お祝いにうどんば、ごちそうしちゃろ～」と出迎える小川さん。そんな微笑ましいやり取りを聞いている妻のモモエさんは、どう思っているのか尋ねると、「利益はあまり考えない人ですよ。人が喜んでくれたらそれでいいって」と笑いながら答えてくれました。一番近くで小川さんを支え、共に店を守ってきたモモエさんの言葉が、小川さん最大の魅力を表しています。

「大切なのは心と心のふれあい。ずっと続かせていくのが私の目標です」と話す小川さん。
地域に根ざし、愛され続ける人気店「官兵衛うどん」の店主は、今やすっかり粕屋町が誇る「故郷の顔」。あったかい湯気の向こうから、とびきりの笑顔で迎えてくれる“町の魅力”に会いに、ぜひ足を運んでみてください。

■官兵衛うどん
福岡県糟屋郡粕屋町長者原286-4
TEL：092 - 938 – 4051
営業時間11：00～21：00
定休日：火曜

※この記事は2019年の情報です（「シリタカ！」10月24日放送）。内容は変更している可能性があります。事前にご確認ください。