“濃”&“淡”。全く異なる2種の豚骨を体感せよ!「麺や 道」年間300杯! 豚骨戦士 福岡のラーメンを斬る! VOL.37 ~ふるさとWish 宗像市~
あっさりながら旨味グイグイ!“淡麗豚骨”がキテいる
福岡ラーメンのトレンドの一つに、“淡麗豚骨”“クリア豚骨”と呼ばれるジャンルがある。素材は豚骨(部位は頭でなくゲンコツが多い)であるが、一般的な豚骨ラーメンと異なり、白濁させず弱火でコトコトと炊いて透明感を残したスープに。同じく人気の、こってり“泡系”と比べると濃度が両極端な、淡くあっさりとした味わいが特徴である。ひと言で豚骨ラーメンといっても、骨の部位や炊き方で表情、味わいが大きく変わるのがおもしろい。
飯塚市「来来」(本連載Vol.4で紹介)、宮若市「来々軒」(Vol.8で紹介)、北九州市「南京ラーメン黒門」が“淡麗豚骨”の三大店。中洲「豚そば 月や」、ラーメンスタジアム「本田平次郎商店」と同ジャンルを推す新店も出てきている。
「来々軒」は1963年創業と齢半世紀を超える老舗であるし、「本田平次郎商店」においては1937年に久留米で生まれた豚骨ラーメンの透明スープを再現している(白濁豚骨が誕生したのは1947年)。“淡麗豚骨”“クリア豚骨”という呼び名は最近のものであるが、その歴史は古いのだ。
「幻らー麺」と銘打つ淡麗豚骨が人気の「道」
今回紹介する、宗像市「麺や 道」の店主・太田徹さんも淡麗豚骨に魅せられた一人。試行錯誤を重ねて辿り着いた淡い「幻らー麺」が、熱心なラーメンファンからも人気を集めている。
1986年生まれ。宗像市で育った太田さんのラーメンのキャリアは「がんこもん」から始まる。淡麗ではなく“特濃”をウリにする名店だ。「がんこもん宗像店」のあった、その場所を引き継ぎ独立。「麺や 道」を2016年に開業した。「独立してもなんとかやっていけるだろうと思っていましたが、がんこもんの看板を外したら途端にお客さんが来なくなった。開けてから1年間はまさに地獄。ラーメンを甘くみていたこと、自分の非力さを痛感しましたね。死ぬ気でラーメンと向き合おう。改めて決意したんです」。
自衛隊、バーテンダー、精肉会社、パチプロなど。それまで、いろいろな仕事を経験していた太田さんであったが、「ラーメンにかけたい!」という熱い思いが沸いてきた。まずは、小倉から久留米まで約100軒のラーメン店を食べ歩く。そのなかで、特に太田さんの心を打ったのが淡麗豚骨であった。“あっさりとした味のなかで、幾重にも広がる深いコク”。太田さんは自分なりのクリアな豚骨ラーメンを作るべく店にこもり研鑽を重ねた。
ゲンコツを材料に、たぎらせすぎず10時間炊き髄から旨味を抽出する淡麗「幻らー麺」。そして、ゲンコツ、頭骨、豚皮を使い、骨が自然とボロボロになるまで強火で炊き込む濃厚「極らー麺」。濃度、味わい、ビジュアル、全く異なる2つの豚骨ラーメンが完成した。
透明感を残したあっさり「幻」は、食べ進めるごとに旨味がグイグイ押し寄せる。スープとの一体感を出すため、チャーシューはラーメンダレに漬け込むだけのシンプルな味付けに。卓上のブラックペッパーをふるのもいい。一方「極」は、別鍋で取る背脂を少量入れてもらうのがおすすめ。程よいとろみ、重厚感のある豚骨スープだが、臭みやギトギト感は全くない。
太田さんはラーメン愛に満ちた、熱い男である。
淡麗豚骨は先に挙げた3大店と比べられることも多いが、「型にハマらず、いいところは取り入れたい」という謙虚で柔軟な姿勢、旺盛なチャレンジ精神をみると応援したくなる。「幻」「極」のほかに、二郎を模したラーメン、辛味の「闘魂らー麺」、バジルラーメンなど、創作麺開発にも意欲的だ。
「麺や 道」太田さんは、「駒や」倉田さん、「二極」藤瀬さん、「にへい」二川さん、「六味亭」銘田さん、「絶好鳥」吉冨さんと親交が深く“大将会”を結成。
11月には、この蒼々たる6店舗を巡るとオリジナルTシャツがもらえるスタンプラリーも予定している。
北九州・筑豊「六倉会」や「久留米ラーメン会」もそうであるように、結束の強いラーメン連合があると地域が盛り上がる。「大将会」の活躍にも期待したい。
【麺や 道】
住所:福岡県宗像市稲元2-2-20
電話:080-3988-4979
営業時間:11:00〜22:00 ※売切れ次第終了
休み:不定
席数:14席
駐車場:5台
上村敏行(かみむらとしゆき)。1976年鹿児島生まれ。2002年よりラーメンライターに。以降年間300杯を食べ歩き「ラーメンWalker」はじめ各媒体での執筆活動、ラーメンイベント監修などを行う。KBC地域リポーター。
※この記事は2019年の情報です。内容は変更している可能性があります。事前にご確認ください。