澄んだ淡麗豚骨でコアなファンの心を掴む。飯塚市「来来」 ~年間300杯!豚骨戦士 福岡のラーメンを斬る!VOL.4~
ラーメンほど食べ手の好みが別れ、各自こだわりを語りたい食のジャンルはないだろう。仲間や同僚とラーメン談義に花が咲き、店で啜っているまさにその時も、ラーメンの話で持ち切りになっている様子をよく目にする。また、筆者はラーメンの話題を通じて初対面の人ともすぐ打ち解けることもしばしば。ラーメンは人を笑顔にする不思議な魅力をもっている。
今回紹介する福岡・飯塚市「来来(らいらい)」はラーメンの旨さはもちろんのこと、穴場的立地、店のしつらえ、システムなど、ツウ心をくすぐる要素が満載。福岡のラーメン好きが、いま最も“語りたい”“教えたい”店だ。
看板のない伝説の店「来来」をラーメンライターが実食レポ
「来来」に看板はない。目印は片島1丁目交差点の標識と、「こんなところに?」という場所にできる順番待ちの列。店の引き戸をよ~く見ると“営業中”の木札(小っちゃ!)。そして“ぬえ。”と書かれた謎の札もある(以前はその日のスープの出来を示すものだったが、現在は大将の遊び心で謎の日替りメッセージが掲げられる。ちなみに、ぬえ。は大将が好きな妖怪のことだそう)。
じ、自由だ!!
そして営業時間が極端に短い。大将の仕込みが完了し次第9:00過ぎに開店、決まって11:00ごろには売り切れてしまう。約2時間!! 筆者自身、3度目の来店(平日10:00前到着)でようやく入店できた。
店内はL字カウンターのみ。前客と入れ替わるように席数分の7人がほぼ同時に席に着く。中心の厨房はきれいに整頓され、ラーメン並600、大¥700、ごはん¥100のメニュー表以外は余計な装飾なし。BGMもなくコポコポと茹で釜の音だけが響いている。入店直後はこの、シーンとした空間に少しドギマギしてしまったが、大将が緊張感を解きほぐすように優しい声で「どこからきたと?」。こんな変わった店をやっている大将なのでなかなか話しずらい感があったのだが、一気にほぐれ、ラーメンを待つ間隣客とも話が盛り上がる。この限られたコバコ空間での大将や客との触れ合いは、屋台で感じる雰囲気に似ている。
ついにご対面。 これが、珠玉の淡麗豚骨だ。
大将がラーメンを作る様子をカウンター越しに観察。昔ながらの羽釜で麺を泳がせ、真っ平らな網ですくう。シャシャッと手首のスナップで麺を上げ、釜の縁にコン!と湯切り。流れるような動きに魅入ってしまう。
透明感の残る豚骨スープ。具はチャーシューのみでネギものっていない。シンプルで気品のある一杯。カウンターの上で淡く輝いているように見える。
スープをすすると、、うほっ!第一印象は“あっさり”。しかし、しかし!!
あっさりでも物足りなさを感じさせない深いコク、旨味が次々と押し寄せる。淡麗スープでしっかりと表現された“豚感”。これは凄すぎるぞ。
「私の作るラーメンは素っ裸と一緒ですから」と謙虚に話す大将の池田さん。
地元飯塚市出身の池田さんは、無類のラーメン好きだったこともあり平成25年に「来来」を開業。当初は“毎日食べられる日替りラーメン”を掲げ、澄んだ清湯、白濁した白湯、両方の豚骨ラーメンを出していた。次第に“澄んだ豚骨スープをとるおもしろさ”“足していくのではなく引いていく。よりシンプルなラーメン作り”に魅せられ、現在の淡麗豚骨を突き詰めることに。
「スープもチャーシューも1日分しか作らない」が身上。臭み、エグミも全くないピュアな豚骨スープを仕込むには、釜につきっきりにならなければいけない。火の大きさが数ミリ違うだけで仕上がりに影響するからだ。
現在「来来」は9:00過ぎからオープンしているが、大将の池田さんが仕込みで入るのはなんと深夜2:00。納得のいく20~30杯のみしか作らない。
朝から飯塚に向かうことになりハードルの高い店ではあるが、絶対に食べていただきたい。
人に教えずにはいられなくなる。
※この記事は2019年の情報です。内容は変更している可能性があります。事前にご確認ください。