盛りもいい! 豚骨ベースのちゃんぽんが旨すぎる「一天愛」年間300杯! 豚骨戦士 福岡のラーメンを斬る! VOL.35~ふるさとWish 福岡県苅田町~
苅田町民が口を揃える“ちゃんぽんといえば”の店
今回のラーメンwishの舞台となるのは福岡県京都郡苅田町。京都郡を“みやこぐん”と読むこともへぇ〜、となる苅田町の私的なイメージは“空港”“ニッサン”“マテ貝”。さらに、とある食堂の激旨“ちゃんぽん”!
苅田町で食べるべきは、ラーメンなら「喜福」。そして、ちゃんぽんなら「一天愛」である。ここ1か月筆者は特にラーメンラッシュで、豚骨を注入しまくっている。“ちゃんぽんはヘルシー、ラーメンはなんとなくジャンク”。そんなイメージ先行の一部の意見ではないが、「少しでも野菜を」と、体をいたわるべく「一天愛」へ向かった。
先代の味に惚れ込んだ常連客が継承
苅田町殿川町にあるジモトの愛され店「一天愛」は、ちゃんぽんのオーダー率が9割の食堂(ちなみに、ラーメンもある)。前身は同町にあった「味覚食堂」で、もと常連だった岡田数広さんが屋号を改め約13年前に継いだ。
“常連客が継承する”。先代の味に惚れ込んだ客が、店の灯を消したくないと立ち上がることは少なくない。北九州市「龍王」(本連載Vol. 27で紹介)、春日市「天広軒」などの老舗もそうだし、最近でいうと、二毛作ラーメンをしていた北九州市「泰玄」を「支那そば かね庵」として再スタートさせたのも元常連だ。
もともと苅田町で学生寮を営んでいた岡田さんは、「味覚食堂」でちびちびと酒をやり、麺で締めるのが楽しみであった。店を継ぎ「一天愛」を開くまでのエピソードが非常に興味深かったので紹介したい。
「ある日、いつものように『味覚食堂』に行ったら突然閉店していたんです。自宅兼店舗の勝手口から訪ねて大将に話を聞いたら『歳もとったし、もうよかろうもん』と言う。じゃあ、私にやらせてください!と。帰って妻に、麺食堂を始めることにした、と伝えたら、鳩が豆鉄砲状態でしたね。1人でやると説得して許しが出ましたが、言わんこっちゃない。すぐに妻にも手伝ってもらうようになりました」と笑う岡田さん。
「一天愛」も前身の「味覚食堂」も“ちゃんぽんといえば”の店で、ラーメンもあるが、オーダー率は9:1で圧倒的にちゃんぽん。おもしろいのは、岡田さんはラーメンばかり頼む少数派の客であったということだ。
「先代に最初、ラーメンの作り方を教えてくださいと言ったら怒られましてね。ウチはちゃんぽんやろうもん!と笑。伝授されたレシピ通り作ったのですが、食べ込んだラーメンと違い、味の正解が分からない。『味覚食堂』の常連たちが、ちゃんぽんの味をみてくれて、ああでもない、こうでもないと、とにかく苦労して調整しました」岡田さんは振り返る。
ちゃんぽんは羽釜で炊く豚骨×鶏ガラの共出しスープが基本。中華鍋で豚肉や野菜、イカを炒めてスープを張り、麺を投入。具の旨味が染み出たスープを麺にしっかりと吸わせる。そして、炒めている途中にも具を追加で投入。あえて、野菜の炒め、煮込み加減を変えて食感の変化を生むためだ。ガシャガシャ、カンカン! と中華鍋で炒めるけたたましい音も食欲をそそる。
現在65歳の岡田さんは山登りが趣味。80歳までは現役で厨房に立ちたいと意気込む。
野菜こんもりで、マイルドなスープたっぷり、大将の人柄にも癒される名ちゃんぽん。苅田町の名物といっていい。
【一天愛】(いってんあい)
住所:福岡県京都郡苅田町殿川町1-52-103
電話:093-436-5239
営業時間:11:00〜15:00、17:00〜19:00
休み:月曜
席数:18席
駐車場:4台
上村敏行(かみむらとしゆき)。1976年鹿児島生まれ。2002年よりラーメンライターに。以降年間300杯を食べ歩き「ラーメンWalker」はじめ各媒体での執筆活動、ラーメンイベント監修などを行う。KBC地域リポーター。
※この記事は2019年の情報です。内容は変更している可能性があります。事前にご確認ください。