大将もラーメンも個性爆発! この“味”は、とにかく体感するしかない!!「大陽軒」 年間300杯! 豚骨戦士 福岡のラーメンを斬る! VOL.31~ふるさとWish 筑前町~
業3時間以内に駆け込むべし! 語り継がれる筑前町の名物店
長い付き合いゆえ、愛情と敬意をもってあえて言わせていただく。このオヤジはとにかくクセが強い。福岡県筑前町にある「大陽軒」(だいようけん)の大将・堤洋一郎氏。“1日3時間しか営業しない”“アルカリ豚骨スープ”。そのウワサを聞きつけ訪れたことのある人も多いだろう。ラーメンの旨さはもちろん、店の穴場的立地やシュールな雰囲気、個性爆発の大将、そして、なかなか食べることのできないレア感。とにかく、人に教えたくなる。
今回は、長く語り草になっている「大陽軒」に焦点を当てたい。
筑前町・原地蔵に立つ「大陽軒」は営業時間が極端に短い。なにせ14:00過ぎには閉店してしまうのだから、近くを通った、ではなかなかタイミングが合わない。時間を見て店を目指す必要がある。看板に掲げるアルカリ豚骨スープを最高の状態に保つため(酸化させない)という理由で1日3時間ほどの営業となっているわけだが、この“アルカリ”とはいったいどういうことだろうか。
20年近く前、筆者が初めて同店を訪れた際、店主の堤さんがリトマス紙を使いながら(実験みたいで度肝を抜かれたが)、アルカリスープへのこだわりを語ってくれたのを覚えている。「一般的な豚骨ラーメンは酸化しやすい。私的には、アルカリ性の方が体にスゥと馴染み、より優しいスープであると考えています。このエリアに湧く地下水、独自の豚骨の下処理や煮込み方、その他の自然素材を組み合わせ、フレッシュなアルカリスープに」。
ラーメンの麺のかん水はアルカリ性である。スープにも、より酸化させない工夫をほどこして、アルカリを安定して保つ工夫をほどこしているということだろう。アルカリ性、酸性の善し悪しは分からないが、堤さん自身、透徹とした独自のラーメン論をもち、話すことも当時のままで全くブレがない。熱い思いとマシンガントークも相変わらずだ。
スープの材料は豚のゲンコツはじめ、頭以外の部位、トマトやタマネギなどの野菜。さらには羅漢果や塩麹を使う。そして、「豚の旨味だけを残す独自の血抜きの仕方」と堤さんが言うチャーシューは、余分な脂身を丁寧にそぎ落としてあり、甘く濃厚なとろみダレをかけているのが特徴。スープを飲むと、ほんのりとした甘さ、しっかりとした塩気、豚骨のコクが絶妙に絡み合い、後味はすっきりとしている。肉感のあるチャーシューは、噛むごとに豊潤な旨味がジュワワ。ひと口目からハッとなる、他に類をみないタイプの豚骨ラーメンである。
「大陽軒」店主の堤洋一郎氏は1966年久留米出身。特にラーメン激戦区の花畑エリアで育ち、幼少から久留米ラーメンに囲まれて育った。驚くべきは、15歳でラーメンの修業に入り、二十歳過ぎには自分の店を開いたこと。「ウチが貧乏だったもので。久留米ラーメンの諸先輩方への憧れもあり、とにかく早く働きたかった」と堤さん。
“いい水”を求めてこの地に辿り着き、自分ならではのラーメン作りに明け暮れた。「試行錯誤を続け、最終的にはすべての旨味を自然のものから出すことに成功しました。開業当初は夜までやっていたのですが、納得のいくアルカリスープだけを出すため、営業時間も短くなっていきました」と堤さんは話す。
「大陽軒」では大将の堤さんと、笑顔が素敵な奥さんが迎えてくれる。かつて、奥さんにおんぶされ店に顔を出していた息子の和也さんは成長して、同じくラーメンの道に。久留米市「大陽軒 西町店」をまかされている。
愛すべきラーメンに大将の人柄、店の雰囲気も突っ込みたくなる要素が満載。
この店の魅力はとにかく体感しないと分からない。
【大陽軒】(だいようけん)
住所:福岡県朝倉郡筑前町原地蔵1847-3
電話:0946-21-1876
営業時間:11:00〜14:30ごろ
※この記事は2019年の情報です。内容は変更している可能性があります。事前にご確認ください。