高齢者の特技も力に!70年ぶりに伝統工芸復活を目指す若きデザイナー ~ふるさとWish朝倉市~

Hinome代表 西村政俊さん

柿や梨など、県内有数のフルーツの里として知られる福岡県朝倉市。そんな朝倉市の旧甘木市エリアに伝わる伝統工芸、「甘木絞り」を復活させるべく奮闘する、地元出身のデザイナーがいます。

地域の特性を生かし栄えた「甘木絞り」

 糸で生み出される繊細な柄が甘木絞りの魅力です

明治~大正時代にかけ“生産量日本一(絞り染め)”という記録も残っている甘木絞り。しかし、戦時中の繊維類統制や着物文化の低迷などで徐々に衰退。約70年前に産業としての甘木絞りは途絶えたといいます。そして今、これを復活させようとしているのが、「hinome」の西村 政俊さんです。

甘木絞りの特徴は、藍染めの鮮やかな色に加え、縫い付けた糸で布を絞ることで葉っぱや花火などの細やかな模様を作り出すところです。「絞り染めというと抽象的な柄が多いが、甘木絞りは他にない具象的な柄が特徴」とその魅力を語る西村さん。

では、なぜ朝倉の地で染め物が栄えたのでしょうか。郷土の歴史に詳しい、甘木歴史資料館の國生 知子副館長に伺いました。「歴史的には、九州で最初に“絞り”が出てくるのが大分と熊本なんです。(朝倉から近い)大分の影響も指摘されていて、地理的な点が影響した可能性もあります」と教えてくれました。

さらに、朝倉市の豊富な水もその発展を支えたといいます。「水が豊富な地域なので、木綿をさらすという産業がずっとあったんです。それが、小石原川や甘木川の川原で非常にさかんになされていたのです」と國生さんは、このエリアならではの背景も教えてくれました。

伝統工芸の復活のウラに、地域の高齢者の力も

“甘木絞りの伝統は受け継がれ、やがて「日の目」を見る”という想いから名付けられたブランド名

西村さんが甘木絞りと出合ったのは、服飾デザイナーとして働いていた3年前だといいます。「ふと自分の地元に伝統工芸ってあったのかな、と思って調べたら甘木絞りがあって。それで興味を持つようになりました」と西村さん。

以来、地元の人を辿り、甘木絞りの技法を学んだという西村さん。そして1年間の試行錯誤を経て、甘木絞りのオリジナルブランド「hinome」を立ち上げました。「せっかく自分が生まれた町なので、そういった歴史や文化があるなら後世に残していけるようにしたいと思って」とブランド立ち上げへの想いを語ってくれました。

そのために、一線で働いてきたデザイナーとしての経験を伝統に吹き込もうとしています。「伝統として残していくには、時代に合ったものを作らないといけないと思う。昔つくられたものをそのまま作るのは、“伝統”というより“伝承”になると思うので」と、デザイナーならではの視点も。

「好きだから楽しい」と、嬉しそうに縫い進める高齢者。お年寄りの“特技”が甘木絞りの復活を支えています

ある日、西村さんは地元のデイサービスに訪れました。お年寄りに、甘木絞りの体験会を実施するのかと思いきや、彼女たちが手掛けているのは甘木絞りの商品というから驚き。実は、ブランド立ち上げ当初から作業工程の一部を、お年寄りに依頼しているといいます。

「(縫うスピードが)速いなあと。昔からできる方がほとんどなので、若い人よりも手で縫う作業が速い。皆さん、高齢者って守らなきゃという意識が強いと思うのですが、得意なところをたくさん持っていると思うので、守るより得意なところをサポートしたほうが楽しく生活ができると思う」と、西村さんは伝統工芸の復活とともに、地域の高齢化にも向き合っているのです。

どの活動にも、西村さんの根底にあるのは土地が育んだ産業への想い。「(甘木絞りが)この土地で生まれた何かしらの理由があると思うので、残していったほうがいいのかなと。産業としてやっているのは僕だけなので、昔みたいにたくさんの人の生活が成り立つような、大きな産業になっていったらいいなと思います」と今後の展望も語ってくれました。

これからの朝倉市は、“甘木絞り”を軸とした地域の活性化も期待できそうです。

hinome
HPから商品を購入することもできます
http://www.hinome-studio.com/

※この記事は2019年の情報です(「シリタカ!」7月31日放送)。内容は変更している可能性があります。事前にご確認ください。

hinome

住所:福岡県朝倉市堤1712-8
電話番号:050-5241-8085

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