旨味を重ね深~い茶色に。これぞ食堂系ちゃんぽんの底力!「天山」年間300杯! 豚骨戦士 福岡のラーメンを斬る!VOL.20 ~ふるさとWish吉富町~
福岡県の東端、大分との県境にある吉富町。南北3km、東西2kmの“九州一小さな町”。そして、“吉”を呼び“富”を生む。なんとな~く、ご利益ありそうなこの地に、40年近く愛される食堂「天山」がある。屋号は、町の小高い山「天仲寺山」に由来。71歳になる川嶋友文さんが家族で営む名物食堂だ。
からあげにも使う丸鶏から滋味深いダシが出る
本連載は麺を啜る企画だけに、今回の主役はこの店の食堂系“ちゃんぽん”。なのだが、ちゃんぽんの魅力を伝えるためにも、まずはもう一つの名物“からあげ”にふれねばなるまい。
からあげの聖地・大分県中津市と隣り合う吉富町や周辺の豊前エリアもまた、古くから、からあげ文化が根付いている場所。「天山」ももとは、からあげと餃子を看板に始まった店だ。
同店のからあげは“さっぱり塩味”と“ふんわり衣”が特徴。丸鶏の生肉を漬け込んだりせずにそのまま使い、味付けをするのは衣のみ。衣の材料、粉の打ち方は企業秘密であるが、フライヤーでなく昔ながらの鉄鍋で揚げ、しっかりと油をきる。衣のふんわりしたところと、パリパリ部分のバランスが良く、塩加減も絶妙。“何個でもパクつける”タイプのからあげだ。
「ウチは、部位ごとでなく鶏を丸のまま仕入れています。仕込みに手間がかかりますが、その方がいいものを安く出せますから。からあげ一皿にモモやムネなど全身の肉が入っているのもそのため。からあげで余ってしまうガラを有効活用しようと生まれたのがちゃんぽんです」と店主の川嶋さん。このちゃんぽんを皮切りに、客の要望にも応えさまざまなメニューを作るようになった。
こんな旨いからあげに使う丸鶏のガラを炊けば、さぞ良質なスープが取れるだろう。厨房で寸胴を見せてもらうと、スープは深い茶色。ガラを継ぎ足し、煮込み、旨味を重ねているのだという。
ちゃんぽんの具材は、豚肉、エビ、イカ、キャベツ、モヤシ、タマネギ、ニンジン、キクラゲ、長ネギ、カマボコ、天ぷら(多い!)。
鶏スープを中華鍋に張り、これらにぎやかな具と麺を煮絡める。芳醇な鶏スープに具の旨味が染み出し、麺にもしっかりと浸透。啜ってみると、さっぱり味のなかでも素材の旨味が幾重にも広がる。これはイイ!
「昔は、鶏ガラだけでなく豚骨も入れていたので、パンチのあるスープだったんだけど、私も常連さんも歳をとって、だんだんさっぱり派になってきたよね」と笑う、川嶋さん。
派手さはないが、しっかりと旨い。そして安い!(1杯500円)。これぞ食堂系ちゃんぽんの魅力である。
「天山」では、ちゃんぽんとからあげ、さらに「豚のケチャップ煮」もぜひ試してもらいたい。ほんのり甘い自家製ケチャップソースで豚肉を絡めたもので、
ご飯が進みまくり! レトロ食堂つながりで、糸島「角屋食堂」のポークチョップを連想したが、またそれとは違った味わいである。
【天山】(てんざん)
住所:福岡県築上郡吉富町広津403
電話:0979-25-0560
営業時間:11:00~13:00、16:00~20:00
休み:日曜、祝日
席数:20席
駐車場:3台
※この記事は2019年の情報です。内容は変更している可能性があります。事前にご確認ください。