「復興と継承」(福岡県北九州市)
2024年12月08日
ミシュランガイド福岡で2度の二つ星に輝いた、北九州市にある「江戸前鮨 二鶴」。
三代目の舩橋節男さんは20歳の頃、修業先で出会った昔ながらの江戸前鮨に衝撃を受けた。
200年前の冷蔵庫がない時代、その日に獲れた新鮮な魚を屋台で食べる、それこそが江戸前鮨の
原点だという。
「北九州近海の漁場は世界イチだと思う」。
美味しいすしは鮮度がいい魚があってこそ。
ここ北九州近海は、すしネタとなる魚が泳ぐ大陸棚が広がり、さらに、暖流と寒流がぶつかる潮目もあって、魚にとって最高の餌場となり、脂の乗りが良くなる。
そんな好条件がそろった海に囲まれた北九州は、すしを握るには世界屈指の場所だという。
「うまいすしは旨味の相乗効果と黄金比」。
“白酢と砂糖”で仕上げるすしがある中で、江戸前は酒粕から作られる“赤酢と塩”で味を付ける。
「いい塩梅(あんばい)」という言葉は、ここからきており、塩と酢のバランスがちょうどいい時に、素材の甘さが引き出される。
そして、すしネタの「動物性の旨味」と、赤酢に含まれる「植物性の旨味」が5:5の黄金比になった時、旨味の相乗効果が生まれ美味しいすしが完成する。
これが200年前に誕生した江戸前鮨の技術だそうだ。
そんな舩橋さんが未来に残したい風景は北九市の「旦過市場」。
100年以上の歴史があるという昔ながらの市場で「北九州の台所」ともいわれる場所だ。
二度の火災に見舞われ、多くの店舗が焼損したが、復興、開発が進み、市場の人たちは変わらず前を向いて過ごしている。
そんな人たちに支えられて江戸前の鮨を握ることができていると、舩橋さんは語る。