【わざわざ行きたい店】年間4万人が訪れる!? ココでしか味わえない極上フルーツと贅沢グルメ!? 久留米の大人気フルーツ農園物語『フルトリエ』(福岡・久留米市)
九州自動車道の広川インターを降りて、10分ほど。梨畑のあいだの道を進むと、洋風の建物が見えてくる。
『fluitelier(フルトリエ)』。
フルーツのアトリエ、を縮めた造語だという。フランス語のような響きを意識して名付けられたその屋号は、代々続いてきた「中村果樹園」の、新しい名前である。
■小玉の梨が、丸ごとひとつ
席についてまず頼んだのは、2品。
ひとつは、「シャインマスカットのパフェ」(税込1,870円)。自社栽培の大粒のシャインマスカットを、これでもかと惜しみなく使っている。夏のあいだ、毎年いちばん人気なのだそうだ。粒の大きさが、そのまま皿の上の贅沢さになっている。
もうひとつが、「まるごと梨タルト」(税込660円)。小玉の梨を、丸ごとひとつ。切り分ける前のその姿を見た瞬間に、なんというか、笑ってしまった。産地でしか成立しない発想である。
カフェで出てくるものは、基本的にすべて自分の畑で採れたフルーツでできている。いちご、梨、ぶどう。珍しいところでは、ラズベリーまで自社で育てている。
季節外のオレンジやメロンなど、どうしても採れないものだけは仕入れる。それ以外は例外なく自社産。パフェも、タルトも、月替わりのランチプレートも、畑から数十メートルの距離を移動してきた果実でできている。
なぜ、そこまでするのか。話は、この土地の梨がたどってきた道のりにさかのぼる。
■誰にも知られていなかった産地
久留米市藤山町。
梨の栽培が始まって百年を超える産地でありながら、ここで梨が作られていることを、福岡県民でも知っている人は少ない。しかも、全国でもかなり早い時期に収穫が始まるエリアなのだという。
「実はこの辺りって、全国で一番最初に梨が取れる地区なんです」
四代目の中村美紗さんは、そう言って笑った。福岡の藤山や八女、あるいは佐賀の伊万里。そのあたりでどこが一番早いか、という話らしい。
それほどの産地が、なぜ知られていなかったのか。
「採れた梨は、すべて東京や大阪の市場に出荷されていたんです。全量出荷だと、外から産地は見えないじゃないですか」
いいものをつくっている。けれど、つくっている場所そのものは誰にも見えていない。産地の名前は、荷札の上でしか流通していなかった。
だったら、ここに来てもらおう。
そう決めたところから、この農園の物語は始まる。
■愛知からの帰り道
中村さんは、もともと農業を継ぐつもりがなかった。
高校を出て愛知県で就職し、趣味で始めたキックボクシングに没頭してプロにまでなった。しかし怪我が重なり、選手としての続行が難しくなる。
「次に何をやりたいかと考えたときに、実家の農業をやってみたいなと」
ただ、すぐには帰らなかった。
継ぐと決めてから二年間、東京の農業大学校に通っている。学んだのは栽培技術ではなく、マーケティングと経営戦略だ。その二年で経営計画を立て、借りられる畑を手配し、準備を整えてから久留米に戻った。2017年のことである。
農家を継いだ、というより、事業を立ち上げるために帰ってきた、という表現のほうが近い。
■年間四万人が、わざわざ来る
帰郷してから、直売所をつくり、観光農園を始め、カフェを開いた。梨だけだった栽培品目に、いちごとぶどうを加えた。
四年から五年で、いまの形ができあがったという。
昨年の来園者は、およそ4万人。梨狩りだけでなく、いちご狩りやぶどう狩り、直売所やカフェも含めた、この農園を訪れた人の数だ。
そして中村さんは、市場への出荷をやめた。
「ここでしか買えません」
さらりと言うけれど、これは相当な決断だ。安定した販路を手放して、人が来てくれることに賭ける。着地型観光に全振りする、と中村さんは表現した。
■5年後の予定を、2年目に前倒し
観光農園を始めた最初の年。長く通ってくれる常連の方々に支えられる一方で、中村さんにはひとつ、考えていることがあった。
「次の世代の顧客に来てほしいな、若い方たちにも来てほしいなっていうところから、ここを作っているんです」
その一心で建てたのが、いま座っているこのカフェである。当初の計画では五年後のはずだった。それを2年目に前倒しした。判断の速さが、そのまま今の景色をつくっている。
結果は、来園者の顔ぶれに表れた。小さな子ども連れ、若い女性。カフェがなかった一年目には、ありえなかった光景だという。
■「気分転換のはずが、疲れて帰る」をなくしたい
カフェのキッズスペースは、2年前の改装で新しくつくられた。いちご狩りのハウス側には以前からあったが、カフェ側にはなかった。
せっかくいちご狩りで楽しんだのに、カフェに移ったとたん子どもたちが手持ち無沙汰になってしまう。それなら、こちら側にも遊べる場所を。子どもたちのエリアと大人の席を分ければ、どちらも気兼ねなく過ごせる。そんな考えから、あの一角は生まれた。
小さな子を連れていると、どうしても周りに気を遣ってしまう。気分転換のつもりで出かけたのに、疲れて帰ってくる。温かいものを、温かいうちに食べた記憶がない。
その感覚を、中村さんは正確に言い当てた。
「親御さんの負担を減らしてあげたいなと」
子どもが後ろで遊んでいて、自分は座ったまま、ゆっくり食べられる。そういう時間のために、あの場所はある。
■手の届く高さに、梨が実る
梨畑では「ジョイント栽培」という方法が採られている。枝の伸びる向きと高さを調整し、実が低い位置になるようにする仕立て方だ。
脚立がいらない。だから、子どもの手が届く。通路もフラットにしてあるので、車椅子でも畑に入って収穫できる。
「今まで観光農園に来られなかった方たちにも、来てほしいので」
理念は、ひとつだけだという。
誰もが思い出に残る観光農園にしたい。
ジョイント栽培も、キッズスペースも、カフェの前倒しも、すべてこの一行から派生している。
犬と一緒にフルーツ狩りができるのも、その延長線上にある。ドッグランと犬用シャワーまで併設されていて、遊ばせて、洗って帰ることができる。
■荷札の向こうにあったもの
かつて東京の市場に並んでいた梨には、この農園の景色は写っていなかった。
四代目が変えたのは、名前でも、栽培品目でもなく、誰に向かって果物をつくるかという一点だったのだと思う。
早い時期に実る、この土地の梨は、ここまで来ないと食べられない。
でも、来てしまえば。もぎたての梨も、丸ごと一個が乗ったタルトも、子どもが転げまわるキッズスペースも、全部ひとつづきの午後になる。
わざわざ行く価値は、たぶんそこにある。
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■『フルトリエ(中村果樹園)』
住所:福岡県久留米市藤山町714
電話:0942-50-0191
○直売所
営業時間:10:00-17:00
○カフェ
営業時間:11:00~17:00(LO16:30・ランチ11:00~14:00)
定休日:水曜
※フルーツ狩りは完全予約制(ご予約はHPから)
HP:https://fruitelier.jp/
Instagram:@fruitelier
https://www.instagram.com/fruitelier/
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※記事内の情報は2026年9月取材時点のものです。最新の情報は公式Instagramをご確認ください。
■ フルトリエ中村果樹園
住所:福岡県久留米市藤山町714
電話番号:0942-50-0191
営業時間:午前10:00~午後5:00
定休日:水曜日
『フルトリエ(中村果樹園)』公式HP
Instagram:@fruitelier
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