【話題の新店】ミシュランの厨房から故郷へ!わざわざ食べに行きたい「幻の牛✕出汁」ステーキ『高手牛とパスタの店 なかしま』(福岡・桂川町)【まち歩き】

福岡市内から車を走らせること約40分。豊かな自然と古墳の町として知られる桂川町に、今、わざわざ足を延ばしてでも訪れたい一軒が生まれている。

「高手牛とパスタの店 なかしま」。店主・中島尚紀さんが2026年4月にオープンさせたこの店は、古民家を生かした素朴な佇まいながら、その中身は驚くほど本格的だ。

福岡市内のレストランで料理の基礎を学び、その後イギリス・フランスのミシュラン星付きレストランで5、6年の修業を積んだ中島さん。帰国後は、縁あって鮮魚のバイヤーとして3年間働いた経験も持つ。料理人としての技術と、人と向き合う対話力。その両方を携えて、中島さんは生まれ育った桂川町に戻ってきた。

■市場に出回らない「幻の牛」

この店の主役は「高手牛」。子牛のうちに近江など他地域へ出荷されてしまうため、地元・桂川町でもほとんど知られていない、市場に一切流通しないブランド牛だ。中島さんが理想のステーキ肉を探し歩く中、人づてに紹介され試食したところ、まさにイメージ通りの肉質だったという。生産者との間には偶然にも桂川町にまつわる縁もあり、特別に飼育を依頼して仕入れるようになった。

黒毛和牛特有のくどさや臭みがほとんどないのが、この牛の特徴。生産者が飼料に工夫を凝らし、ただ脂を乗せて太らせるのではなく、栄養バランスを考えた育て方をしているからだそうだ。「人で言えば、ハンバーガーばかりじゃなく、赤・黄・緑の野菜をちゃんと摂っているようなイメージです」と中島さんは表現する。

■「出汁ステーキ」という、どこにもない発想

この店を唯一無二にしているのが、看板メニュー「高手牛出汁赤身ステーキ定食」(税込3,000円)だ。ステーキを出汁でいただくという、聞いたことのないスタイル。しゃぶしゃぶやすき焼きの雰囲気をベースに、カツオと昆布の和風だし、子牛の骨からとったフレンチのフォン、ハーブと野菜のブイヨンを少しずつ重ね合わせた、完全な創作料理だ。

複雑な構成でありながら、日本人の舌に馴染みやすい味わいに仕上がっているのがポイント。塩、醤油、七味という薬味を添えて、好みに合わせて味変を楽しめる。中でも中島さんいち押しの食べ方が、出汁と醤油を溶いた卵に肉をくぐらせ、最後は卵かけご飯として味わうというもの。「肉の出汁とエキスが卵に移って、これが絶品」だという。

見た目はいたってシンプル。しかしそれは「素材の力を最大限に引き出すために、無駄な調理を削ぎ落とした」結果のシンプルさだ。ヨーロッパの一流店で磨いた技術を、この土地の食材と価格帯で味わえる。それがこの店ならではの体験になっている。


■パスタは、家族みんなで囲むための一皿

肉料理を主役に据えながら、メニューには「パスタランチ」(税込2,000円)も用意されている。理由を尋ねると、返ってきたのは意外な答えだった。ヨーロッパでの修業で培った技術を生かしたパスタを地元でも味わってもらいたいという思いに加え、家族で来店した際、肉が苦手な人や高齢の方も一緒に楽しめるようにという配慮だという。

「みんなでお肉」ではなく、お肉が苦手であればパスタを選べる。誰かを置き去りにしない店づくり。ここに、中島さんが目指す店の本質が見える。

なお食後にはパティシエが厳選した素材で丁寧に仕上げるデザートも用意している。

■時計のない店内、家族団らんという設計

古民家をそのまま生かした店内には、重厚な一枚板のカウンターと、ゆったりとしたお座敷、そして個室もある。改装は最小限にとどめ、築30〜40年という建物の趣をそのまま残した。
驚くのは、店内に時計を一切置いていないこと。「みんなが時間を気にせず、おじいちゃんおばあちゃんの家に行って、だらっとするようなイメージ」で空間を設計したという。料理の美味しさは最低限の条件であり、中島さんが本当に大切にしているのは、ゆっくりと空間そのものを楽しんでもらうこと。バイヤー時代に培った「相手が何を求めているかを瞬時に判断する力」は、料理だけでなく、この居心地の良さづくりにも生きている。

■桂川町への入口になりたい

朝倉市や北九州市へ向かう道すがら、多くの人が通り過ぎていく桂川町。中島さんは、この店を「そんな方たちが桂川町に立ち寄ってくれる、きっかけの一つ」にしたいという思いを語る。

盛り付けに使われる花やハーブは、同じく桂川町にある農園「ノガミファーム」のもの。鮮度の高さは驚くほどで、「土の力を感じる」と中島さん自身も太鼓判を押す。地元の縁が縁を呼び、一皿の中に桂川町そのものが表現されている。
将来的には、10〜15年後に再び海外へ渡って事業を展開したいという夢も語る中島さん。

そしていつか桂川町に「食のテーマパーク」を作りたい——そんな構想も温めている。

「お店が繁盛することよりも、桂川町そのものが丁寧に紹介されることの方が嬉しい」。

取材にはできる限り応じるという中島さんの言葉には、この町を良くしていきたいという静かな意志がにじむ。
じっくりと時間をかけて味わいたい一皿が、この町にはある。高手牛の出汁ステーキを求めて、桂川町まで出かけてみてほしい。

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■『高手牛とパスタの店 なかしま』
福岡県嘉穂郡桂川町九郎丸650
電話:070-4704-7831
営業時間:11:00〜14:00
定休日:土・日曜日
Instagram:@nakashima_takategyu
https://www.instagram.com/nakashima_takategyu/

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※情報は2026年9月時点のものです。記載内容は変更している場合があります。

■ 高手牛とパスタの店 なかしま

住所:福岡県嘉穂郡桂川町九郎丸650-1
Instagram:@nakashima_takategyu

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