刀のつばのような文様に、躍動感あふれる「飛形」の文字。
福岡県八女市の「八女福島の白壁の町並み」に2026年1月、ハム&ソーセージ専門店『飛形家 tobikataya』が筑後市から移転オープンを果たしました。
情緒あふれる古い町並みに漂う、芳醇なスモークの香りに誘われて一歩足を踏み入れると、そこには職人のこだわりと故郷への深い愛が凝縮された、温かい空間が広がっていました。
■故郷・八女で再始動。生まれ育った地に根付く
お店を切り盛りするのは、八女市出身の店主・坂田雅彬さん。24歳から10年以上、ハム・ソーセージ作りの道に邁進してきた坂田さんは、昨年12月までお隣の筑後市に店を構えていました。しかし「自分が育ち、工房もある八女に根付いた仕事をしたい」という強い想いが募り、この由緒ある福島八幡宮の目の前という絶好のロケーションへ移転を決めたといいます。
店名の「飛形家(tobikataya)」には二つの由来があります。一つは、修行先「杉の葉亭」で製造していたハムのブランド名「飛形ハム」。そしてもう一つは、地元・八女の名峰「飛形山(とびかたやま)」。「八女といえばお茶ですが、お茶以外の特産品としてもハムを広めていきたいんです」と語る店主の真っ直ぐな瞳からは、地元を盛り上げようとする並々ならぬ情熱が伝わってきます。
■出汁のプロが生み出す、唯一無二の「スパイス出汁」
実は坂田さん、実家が乾物屋さんなのだそう。その利点と経験を生かし、ハムやベーコンを漬け込む「ピックル液」に、スパイスを煮出した独自の「スパイス出汁」を使用しています。お肉を出汁にじっくりと漬け込み熟成させることで、他にはない奥深い旨味を引き出すのです。
今でこそ独自の道を切り開く坂田さんですが、その道程は決して平坦なものではありませんでした。24歳で門を叩いた修業時代。当時は包丁すら握ったことがなく、持ち方から教わるというゼロからのスタート。厳しい修業に明け暮れる日々の中で、ひたすら肉と向き合い、技術を体に叩き込んできました。現在は師匠から受け継いだ伝統製法を大切に守りながらも、理想のおいしさを求めて日々進化を続けています。
原料へのこだわりも徹底しています。メインは地元・八女の「上陽豚(じょうようぶた)」。奥八女の清らかな水と空気に育まれ、地元産のお茶やフルーツを食べて育つため、臭みがなく脂があっさりしているのが特徴です。加えて、クリーンで健康的な長崎県産のSPF豚も採用。どちらも店主自ら養豚場を見学し、その清潔さと質の高さに惚れ込んだ豚肉だけが、この店の主役になれるのです。
さらに「毎日安心して食べてほしい」という想いから、添加物を極力使わないことにも心血を注いでいます。健やかな豚肉と、乾物屋のDNAが息づくスパイス出汁。この二つが重なり合うことで、飛形家だけの味わいが生まれるのです。
■熟成と情熱が生む、珠玉のラインナップ
『飛形家』を訪れたなら、まずはドイツの食肉コンテスト「IFFA」で金賞を受賞した“三種の神器”を味わってみてください。
一つ目は、完成までに3~4週間を要する「1996ベーコン」。上陽豚、ドイツの岩塩、奄美のきび糖、九州産のタマネギ、天然香辛料のみを使用し、じっくり熟成させたそれは、脂身の甘みが際立つ極上の逸品です。二つ目は、しっとりとした質感で、脂の甘さが舌の上でとろける「1996ロースハム」。薄くスライスしてサンドイッチに、厚めに切ってハムステーキにと、好きな食べ方でぜひ。そして三つ目は、弾けるような食感と肉汁が溢れる「粗挽きソーセージ」。絶妙に調合したスパイスで作られ、噛むほどに肉の旨味が広がる自信作です。
■パンとの相性を極めた「ホットドッグ」と
まかないから昇格した“贅沢”「タコス」
パンとの相性を追求したホットドッグメニューも見逃せません。「そのまま食べておいしいものと、パンに合うものは別物」と語る坂田さんは、ホットドッグ専用のソーセージまで開発。 取材時にいただいた「八女チョリパン」(S1300円)は、スパイス香るチョリソーを自らの脂でカリッと焼き上げ、豪快にかぶりつくスタイル。溢れ出す肉汁にさっぱりとしたピクルスが絶妙にマッチします。ボリューミーな「旨辛チリミート」(S1100円)は、ハラペーニョの爽やかな辛味が後を引くおいしさです。
また、常連客の間で密かに人気なのが「本日のタコス」(1ピース800円)ソーセージ作りで出る「端肉」をじっくり煮込んで作られるため、さまざまな部位の旨味が凝縮されています。初めはまかないだったと聞き、そこにかける手間ひまにびっくり。なぜそこまで?と聞くと、「まかないでもおいしいものを食べてもらいたいじゃないですか」と笑う坂田さん。
その飾らない言葉に、職人としての揺るぎない誠実さが透けて見えた気がしました。
■江戸時代のかまどが「燻製室」に⁉
こちらの店舗、元は築100年超の古民家。奥行きが深く、中央にはフローリングの小上がりがあり、お子さん連れでもゆっくり過ごせる心地よい空間です。さらにその奥にある燻製室には、驚きの光景が。なんと、江戸時代からこの場所にあった本物の「かまど」を大工さんの手で改造し、薪やサクラのチップで燻製ができる工房として蘇らせたのです。
「将来は、ここで燻製体験やソーセージ作りもできるようにしたいんです」と夢を語る坂田さん。かまどの外には四季を感じる庭もあり、ここで燻製教室を開いている未来が容易に想像できました。
「八女に移転するにあたって、この町並みに合うように、屋号を漢字に変えました。『飛形』のロゴの“ひげ”の本数も、縁起を担いだ7・5・3になっているんですよ」と、遊び心と郷土愛満載な坂田さん。八女の新しい名物として、そして歴史を繋ぐ交流の場として-。古いかまどに再び火が灯るように、坂田さんの情熱が吹き込まれたこの場所は、これから100年先の八女へと続く、おいしい物語の出発点になるに違いありません。
-ひとこと-
すべてのホットドッグメニューについている「S」と「W」は、「S=シングル=ソーセージ1本」「W=ダブル=2本」の意味。ソーセージ2本は、かなりお腹いっぱいになるわんぱくメニュー。小さめのキッズメニューもあり、ランチタイム(14:00まで)はドリンクやポテトのセットをつけられ、ほとんどのメニューがテイクアウト可能。白壁の街並みを散策がてら、立ち寄るのにぴったりなお店です。
週末には「ワインバー」としても営業。数種類のハムやテリーヌが付く「本日のお惣菜盛り合わせ」(1人前1480円)と共に、昼飲みを楽しむこともできます。また、隠し味にスパイスを使った奥様お手製の「バスクチーズケーキ」(600円)も、驚くほどの人気ぶり。甘いものに目がない方も、お酒好きの方も、誰もが笑顔になれる場所です。
■『飛形家 tobikataya』
住所:福岡県八女市本町116
電話:070-4471-1156
営業時間:水・木・日曜:11:00~18:00(ランチタイム~14:00)/金・土曜:11:00~22:00(〃)
定休日:月・火曜、祝日
https://www.instagram.com/tobikataya/
■ 飛形家
住所:福岡県八女市本町116
飛形家インスタグラム
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