芦屋町の海が育んだ「納得できる塩」!化粧品メーカー『パルセイユ』が挑む、美と食の革命(福岡・芦屋町)【まち歩き】

福岡県芦屋町で、化粧品原料から生まれた「奇跡の塩」が、2025年芦屋町ブランド認定品金賞を受賞。自身の肌トラブルをきっかけにたどり着いた妥協のないものづくりへのこだわりを貫く金井誠一社長が語る、ものづくりの哲学と地域創生への想い。

■自分の肌が教えてくれた「納得できる品質」の価値

「長い間、何も知らずに石油系の製品を使っていたんです」。
パルセイユ株式会社の金井誠一社長は、自身の肌トラブルがすべての原点だったと語る。皮膚科に通い続けても治らなかった肌荒れ。しかし、自然由来の素材を使ったものに変えると、自然に改善していった。
「成分を調べると、自分が使っていたものに疑問を持つようになりました。もっと肌に優しいものを作りたいと思ったんです」。
合成洗剤メーカー、自動車メーカー、石鹸メーカーを経て、2001年に独立。資金ゼロに近い状態からのスタートだったが、「自分のためでもあり、人のためにもなる」という確信が金井社長を支えた。あれから24年。その想いは今も変わらない。

■化粧品メーカーが塩を作る理由

『パルセイユ』の塩づくりは、意外なきっかけから始まった。
「もともと化粧品の入浴剤や歯磨き粉に入れるために、市販の塩を使うのが嫌で、自分で海水を汲んできて煮詰めて作ったんです」。
天然のものしか原料に使わない——そのこだわりが、塩の自社製造へとつながった。芦屋町の目の前に広がる玄界灘と響灘。漁師に頼んで沖から採取した海水は、熱効率の良い平釜で20時間じっくりと煮詰めた後、化粧品製造で培った独自技術によって、他にはない塩へと生まれ変わる。

■40度の真空製法が生む「海水まるごと」の塩

一般的な天日塩は、にがりを落として塩分濃度を89〜90%まで高める。しかし、パルセイユの塩は違う。
「うちは真空で40度の低温処理。にがり成分も落とさずに粉末化するので、塩分濃度は70%台。ちょうど海水と同じ濃度なんです」。
化粧品の抽出機械を応用したこの製法は、他ではほとんど見られない。一部でスプレードライ(110〜120度)による製法があるが、低温で海水を"丸ごと"残すという点で、パルセイユの技術は際立っている。
「黄色い色をしていて、苦味成分やマグネシウムがたっぷり入っています。舐めたら、辛くなくて味が違うと皆さん言いますね」。

■2025年金賞受賞──初めて勝ち取った「実力」の証

「パルセイユ 芦屋町の旨み粗塩」は、2025年に芦屋町ブランド認定品で金賞を受賞した。これまで飴やチョコレート、化粧品など様々な商品を出品してきたが、金賞は初めてだった。
「銀までは取れるんですが、金はなかなか。実力で取れた金賞だと思います」。
100gで864円(税込)。決して安くはない。しかし、工程の複雑さ、検査の手間、そして何より妥協のないものづくりへのこだわりを考えれば、むしろ納得の価格だ。

■美容と食は同じ──「内と外から」の哲学

金井社長が芦屋町で展開するのは、塩だけではない。直営店『パルナチュレ』では、カフェを併設し、食と美容を一体化した体験を提供している。
「自然のものが肌にもいいなら、食べるものも同じではないかと。お客さんが求めるところは同じなんです」。
その象徴が、芦屋町の特産品である赤紫蘇だ。
「芦屋に来た時、誰も注目していなかった赤紫蘇に目をつけました。保湿や抗菌に効果的な成分がたっぷり入っている。うちがパイオニアです」。
地元の『あたか農園』に農薬不使用での栽培を依頼し、独自の「低温真空抽出法」で濃厚なエキスを抽出。化粧品にもカフェの料理にも、ジュース、そして塩ソフトクリームにも——ありとあらゆるところに赤紫蘇を使う。
「赤紫蘇と塩が今のメイン。内から外から、全部赤紫蘇を摂ってもらうコンセプトです」。
特許も2つ取得し、九州大学とも継続的に研究を進めている。

■芦屋町が持つ「ものづくりの力」

水巻町で起業して約10年。広い土地を求めて芦屋町に移転したのは、美しい海岸線に惹かれたからだった。
「でも、実際に来てみて分かったのは、芦屋の歴史の深さです。遺跡や貝殻の化石、地層が残っている。芦屋釜の時代から、京都とのつながりもあった。職人や技術が集まる場所だったんです」。
過疎地域に指定され、交通手段も乏しい。しかし、それが金井社長にとっては最高の環境だった。
「ゴミゴミした工場地帯ではいい発想が浮かばない。こういう空気のいいところで、ゆったりしていると、いろんな情報が入ってくるんですよ」。
芦屋ハーブバレーと名付けた約1万坪の敷地には、有機栽培の農園、工場、カフェ、そして2024年にオープンした体験型施設「武将茶屋」がある。地産地消と地方創生を掲げ、農業者や漁業者と連携しながら、芦屋町ブランド認定品を数多く生み出している。

■「裏から攻める」ブランド戦略

地元の小さな会社が、どうやって全国に広がっていくのか。金井社長の戦略は独特だ。
「自分の力では限界がある。だから、よそのOEMを積極的に取っているんです」。
特に好調なのが、高級旅館やホテルのアメニティ。そこにパルセイユの名前が載る。
「そこで使って、お客さんに気づいてもらう。表じゃなくて、裏から攻める戦略です」。
しかし、どんな依頼でも受けるわけではない。石油系成分の配合を依頼された瞬間、断る。そして、受注前には必ず社長か担当者が1泊2日で学習し、テストに合格することが条件だ。
「敷居は高いです。でも、その姿勢が大事なんです」。

■これからも理想を追い求めて

金井社長が目指すのは、コスメだけでなく、食やライフスタイル全体を提案する総合BIOブランドだ。まだ手を付けていないメイク用品にも挑戦したいという。
「使いやすくて安全なものを作り続ける。それが私の使命です」。
芦屋町の海、里山、そして人々との共創。その中心には、常に妥協のないものづくりへのこだわりがある。

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『 パルナチュレ』(パルセイユ直営コスメショップ・カフェ)
住所:福岡県遠賀郡芦屋町大字山鹿808-6
電話:093-221-5517
営業時間:9:30〜17:00
定休日:日・月曜
Instagram@palnature_shop
https://www.instagram.com/palnature_shop/
URL:https://palseylle.co.jp

■ パルナチュレ

住所:福岡県遠賀郡芦屋町大字山鹿816-1
電話番号:093-221-3005
営業時間:カフェ 11:00〜16:00 コスメショップ 11:00〜17:00
Instagram@palnature_shop
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