
まかないから生まれた絶品パスタ!昭和レトロとイタリアンが織りなす大バズリ喫茶レストランが愛される理由『Benvenuto 蘭和(らんか)~capitolo due~』(福岡・田川市)【まち歩き】

43年続いた老舗喫茶店が、イタリアから帰国した夫婦の手で生まれ変わった。昭和の面影を残しながらも本格イタリアンを提供する「Benvenuto 蘭和(らんか)~capitolo due~」は、地元内外から愛される人気店として注目を集めている。
■イタリアで出会った夫婦が紡ぐ、新旧融合の物語
福岡県田川市の国道201号線沿いに佇む「Benvenuto 蘭和(らんか)~capitolo due~」。イタリア語で「ようこそ、蘭和へ」を意味する店名が示すように、ここは昭和レトロな喫茶店の温かさと、本格イタリアンの美味しさが共存する稀有な空間だ。
「このコンセプトは、僕たち夫婦がイタリアで知り合ったことから始まったんです」と語るのは、オーナーの清水陽平さん。洋服が好きでイタリアに渡った清水さんと、ティラミスなどのお菓子に魅力を感じてイタリアにいた奥様が、現地のレストランで2年間一緒に働いたのが出会いだった。

「私はレトロなものが好きで、ヨーロッパのヴィンテージものとかも好きなんです。この店内の昭和レトロな雰囲気って、なかなかないじゃないですか。壊すのももったいないなと思って」と奥様は振り返る。
43年間続いた清水さんの実父の喫茶店を、夫婦が引き継ぐ形でリニューアル。昭和の面影を残しつつ、イタリアで培った料理の技術を融合させた新しいスタイルの店として生まれ変わった。
■まかないから生まれた絶品パスタと看板メニュー
蘭和には多彩なメニューが揃っているが、中でも注目したいのが「エビとホタテとヤリイカのパスタ(たらこクリーム)」(税込1,500円)だ。手作りドレッシングがかかったサラダも付いており、海の幸の旨味とクリーミーなたらこソースが絶妙にマッチしている。特筆すべきは、たらこの量の多さと提供スタイル。パスタの真ん中にたっぷりとたらこが盛られて運ばれてきて、自分で絡めながらいただくスタイルが楽しい。たらこの濃厚な味わいを自分好みに調整できるのも嬉しいポイントだ。

実はこのパスタには興味深いエピソードがある。もともとはスタッフ用のまかないとして作られていたものが、あまりの美味しさから正式にメニューに加わったのだという。まかないから生まれたメニューだからこそ、作り手の愛情と工夫が詰まっている。
また、店の看板メニューは、SNSでも話題の「ペスカトーレの包み焼き」(1,600円)。これは奥様の強い希望で生まれたメニューだ。
「ペスカトーレは『漁師』という意味で、魚介のトマトソーススパゲティをピザ生地で包んで焼いたものです。イタリアでは主流の料理なんですよ」と奥様が説明する。
日本の顧客に合わせた調整も怠らない。「トマトソースは、玉ねぎの甘さや塩コショウを活かしたシンプルな味付けにしています」と、素材の味を活かしたシンプルな美味しさが特徴だ。
■地産地消への強いこだわり
蘭和のもう一つの特徴は、徹底した手作りと地産地消への取り組みだ。ドレッシングやソースは全て手作りで、食材は地元の生産者から直接仕入れている。
「地産地消もそうですが、生産者の顔がわかるものを使いたいという想いが私は強いんです。なるべく地元の食材を使って、安心安全に食べてもらえる、愛着が湧く、自分の中で。そういったものを食べてもらいたいっていう想いが強いですね」と奥様は力強く語る。
野菜の選択基準はシンプルだ。「自分たちが食べて美味しいもの」。農家から直接購入したり、道の駅で仕入れたりと、品質にこだわった食材選びを続けている。

■幅広い世代に愛される理由
蘭和の客層は実に幅広い。三世代で来店する家族も多く、70〜80代のおばあちゃんから子供まで、様々な年齢層の人々が訪れる。
「どの世代の人が来ても食べられるようなものを意識しています」と奥様。メニューは「打倒ファミレス」を掲げるほど充実しており、定食や和食、ドリンク、オードブル、デザートまで幅広く取り揃えている。
特に人気なのは「男前ランチ」(税込980円)と「ベッピンランチ」(税込1,200円)。ユニークなネーミングと良心的な価格設定で、多くのリピーターを獲得している。
客層については興味深い特徴がある。「特に土日は県外ナンバーが多いです」と清水さん。地元田川市内だけでなく、県外からも多くの人が足を運ぶ人気店となっている。
■毎年の挑戦とストイックな運営哲学
「毎年絶対メニュー構成を変えるんです」と清水さんが明かす、蘭和の運営哲学。これは顧客を飽きさせないためだけでなく、自分たちやスタッフがマンネリ化しないための取り組みでもある。
「覚えてきた頃に全部メニューを変えます。ドMなんですよね」と笑いながら語る清水さん。このストイックな姿勢が、常に新鮮な驚きを提供し続ける原動力となっている。
過去には80万円のイタリア製ジェラートマシンを購入し、オリジナルレシピまで開発したものの、店の忙しさのあまり一度も使わないまま売却したというエピソードも。「品質維持のため、最終的には自分たちが手を加えないと納得できないんです」という、妥協を許さない姿勢が垣間見える。
■犬の保護活動という、もう一つの顔
取材中に明かされたのは、夫婦が個人的に行っている犬の保護活動だ。野犬や遺棄された犬を保護し、里親探しを行っている。現在も2匹の保護犬を飼育しており、1匹は山口県から保護した犬だという。
料理への愛情と同じように、動物への深い愛情も持ち合わせている。
■メディアからも注目される人気店
蘭和の人気は口コミやSNSにとどまらない。「今年はもうテレビ出演が3件目なんです」と清水さん。地元メディアをはじめ、様々な媒体で取り上げられる注目の店となっている。
「インスタグラムとGoogleしかしていないんですが、たくさんの方が色々なところで紹介してくださるんです。ありがたいことです」
ランチタイムには駐車場が満車になるほどの賑わいを見せ、「戦場みたいになってる」と笑いながらも、多くの人に愛される店として成長を続けている。
■受け継がれる味と新しい挑戦
人気メニューの中には、先代から受け継いだ味もある。「ポークステーキと生姜焼きのタレは親父のレシピを今風に変えただけなんです」と清水さん。43年間培われた味を大切にしながらも、現代の顧客に合わせたアレンジを施している。
一方で、ドレッシングなどは完全にオリジナル。「ドレッシングの販売もしたいねっていつも言ってるんです」と清水さんは語る。イベント時には実際に販売することもあり、その人気ぶりがうかがえる。

■愛され続ける理由
43年の歴史を持つ老舗の温かさと、イタリアで培った本格的な技術。地産地消への強いこだわりと、毎年挑戦し続ける姿勢。そして何より、来店する人に心から楽しんでもらいたいという夫婦の想い。
「来てもらえた時、楽しんでもらえたりとか、ほっと落ち着けるような空間になればいいなと思って始めたんです」と奥様が語るその言葉に、蘭和が愛され続ける理由が集約されている。
昭和レトロとイタリアンが奏でるハーモニーは、今日も多くの人々に特別な時間を提供し続けている。
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■『Benvenuto 蘭和(らんか)~capitolo due~』
住所:福岡県田川市大字川宮712-1
電話:0947-45-0188
営業時間:11:00〜16:00(木曜日は14:00L.O.)
定休日:日曜
Instagram:@benvenuto_ranka
https://www.instagram.com/benvenuto_ranka/
■ Benvenuto 蘭和(らんか)~capitolo due~
住所:福岡県田川市大字川宮712-1
URL:https://www.instagram.com/benvenuto_ranka/
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