
こんな時代だからこそ何度でも訪れたくなる!創業58年ドライブイン!3世代に愛される香春町のソウルフード!受け継がれる老舗の味『ドライブインかわら』(福岡・香春町)【まち歩き】

福岡県田川郡香春町の旧国道322号線沿いに、次々と車が入っていく一角がある。『ドライブインかわら』だ。昭和42年の創業から58年、この店は多くの人の記憶と味覚に深く刻まれてきた。今回、代表の西村さんにお話を伺い、長く愛され続ける理由を探った。
■創業の記憶を受け継ぐ店
「私が生まれる前からあるんです。お客様の方が詳しくて、『俺が何歳の時にお店ができてね』って逆に教えてもらったりします」。
西村さんが語るように『ドライブインかわら』は地域の人々の人生に深く根ざしている。創業者は西村さんの父の兄(叔父)で、当初は鍋焼きうどんやジンギスカンなどを提供する「ドライブイン」として始まった。その後、うどん専門店となり、現在の形に発展していった。
創業者は「新しい事業を始めるのが好きで、始めた店を人にあげてしまう」人だったという。そうした経緯で、西村さんの父親が店を継ぎ、それから半世紀以上伝統の味を守り続けている。

■変わらない味への強いこだわり
店の最大の特徴は、創業以来変わらない味を守り続けていることだ。たこ焼き部門は人手不足で休業していたが「味は絶対に変えない」という条件で別経営ではあるが現在の経営者に引き継がれ、天かすや出汁に使う鰹・昆布などレシピは同じものを使用している。
「58年も続けていたら、時代の変化とともに取引先がなくなってしまったりするんです。そうしたらそれに似た醤油を探さないといけないとか大変なことがあります。でも最初の味、元の味に近づけるようにしています。変えないようにしたいです」。
流行を追わず、「元の味」を変えないことを最重視する姿勢が、58年間愛され続ける理由の一つだ。

■ケチャップベースの謎多きたこ焼き
『ドライブインかわら』の名物の一つが、独特のケチャップベースのソースを使ったたこ焼きだ。しかし、このソースの起源は謎に包まれている。
「創業者がいろいろ食べ歩きとか好きだったみたいで、しばらく大阪とかにもいたので、その影響があったのかなって思ってますけど、生きている人誰に聞いてもわからないんですよ。なんでケチャップなのか」。
地元の人にとっては「普通」の味として親しまれているが、他の地域の人には珍しく映るこの味が、店の個性となっている。「香春の人はこれがベースで、他のと別物だと思ってる」と西村さんは笑う。
■3世代にわたる絆
店の真の魅力は、世代を超えた顧客との絆にある。
「3世代で来ます。おじいちゃんが孫を連れてくることもしょっちゅうです」。
印象的なエピソードとして、西村さんはこんな話を聞かせてくれた。
「『初めてデートした時にここでジンギスカン食べたんよ』って言われて。私はうどんとたこ焼きしか知らなかったので、お客様に聞いて父親に確認したら、本当だったんです。昔はジンギスカンもやってたんだって」。
客の方が店の歴史に詳しいことも珍しくなく、店が人々の人生の一部として存在していることがうかがえる。

■毎日食べられるシンプルなうどんの美味しさ
西村さんがうどんで特に大切にしているのは、「毎日食べても飽きない」味作りだ。
「いい意味で特徴がない。それが逆にいいんです。本当に毎日食べれる感じで。私も子どもの時は毎朝食べていました」。
「晴れの日に1回食べるより、月に1回来るよりも毎日来てもらった方がいい」という考えのもと、常連客を大切にする姿勢が店の基盤となっている。実際に毎日くるお客様もいるという。
■早朝営業の歴史と変化する環境
6時半からの早朝営業は創業当時からのスタイルだ。「朝がいいよ」と創業者が言っていたという話が残っている。立ち食いうどんやドライブインが流行した時代、国道を通勤するトラック運転手などが早朝に利用していた。隣接するガソリンスタンドとセットで利用されることも多かったという。
しかし、時代とともに環境は大きく変化した。
「約10年前に新しいバイパスができて、交通量は大幅に減りました。昔は周辺にファミレスやコンビニ、道の駅もなかったんです。みんな家の前を通ってどこへ行くにも通らないといけなかったのが、小倉からうちの前は通らずに行けるようになった」。
それでも客足への大きな影響は感じていないというのは、地域に根ざした強固な顧客基盤があるからだろう。
■香春町のソウルフードとして
学校が休みの日には、子連れの客で特に賑わう。
「やっぱり子どもの時から来てる方々が多いんじゃないですかね。自分が子どもの頃から連れてきてもらっていたから、自然と自分の子どもを連れてきてくださいます」。
提供の速さや手軽さ、そして安心して家族で利用できる雰囲気が、地域住民に昔から愛される理由となっている。
■お客様の想いに支えられて
最後に今後の展望を尋ねると、西村さんは謙虚にこう答えた。
「ソウルフードと皆さんにおっしゃっていただいていますが、名前だけが独り歩きしてるんじゃないかなって。皆さんのそれぞれの思いの方が、私よりも強いんじゃないかなって思うぐらいです。お客様に育てていただき、支えられて生きています」。
「いつ来ても美味しいね」というお客様の言葉が一番の励みだという西村さんの言葉からは、店と客との深い信頼関係が感じられる。

■おわりに
ドライブインかわらの58年の歴史は、変わらない味と真摯な姿勢で、3世代にわたる人々の日常に寄り添い続けてきた。それは単なる食事の場所を超えて、人々の記憶と人生の一部となっている。
交通環境の変化や周辺環境の発展など、外部要因が大きく変わる中でも、店が変わらずに愛され続けているのは、西村さんが語るように「お客様それぞれの思い」に支えられているからだろう。
今日も変わらない味で、多くの人を迎え続けている。
■記事内の商品
たこやき 15個入り(税込540円)
ごぼう天うどん(税込450円)+えび天トッピング(税込100円)
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■『ドライブインかわら』
住所:福岡県田川郡香春町香春170-1
電話:0947-32-2573
営業時間:うどん 6:30〜15:00 / たこやき 10:00〜18:30
定休日:うどん 水・木曜(祝日の場合火曜への振替あり) / たこやき 水曜
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