“性の多様性”を称え尊重する古賀市プライド 月間『【鹿の湯MEETS】PRIDE MONTH ワークショップ』体験リポート(福岡・古賀市)

「共創」と「多様性」をキーワードに、誰もが暮らしやすい社会づくりに取り組んでいる古賀市では、毎年6月を「プライド月間」と題し、LGBTQ+の権利向上と性の多様性について理解を促すさまざまなイベントを開催。

その一つが、古賀市インキュベーション施設『快生館』(福岡県古賀市薬王寺95)で2024年6月22日(土)に実施されたイベント『【鹿の湯MEETS】PRIDE MONTHワークショップ』。

今回はその模様をお届けします。

『【鹿の湯MEETS】PRIDE MONTHワークショップ』とは…
性の多様性を称え、尊重する「プライド月間」に際して、さまざまな性のあり方についての理解や共感を広げ、一人でも多くの人が快く生きていけるよう企画された参加型イベント。
※詳しくはコチラの下記URL 参照
https://pridemonthkoga.peatix.com/

イベント開催にあたり、ファミリーシップ宣誓制度を九州ではどの自治体よりも早く取り入れ、先進的な取り組みを続けている古賀市を代表して、田辺一城市長が登壇。

「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」という憲法13 条が「何より大切」という信念のもと、福岡県議会議員時代から誰もが生きやすい社会づくりに取り組んできた。「人間一人一人みんな違う、性別、障害の有無、国籍、ジェンダー、多様な人が様々な立場でそれぞれを理解し合い、お互いを尊重して生きていくことが大事」と話した。

続いて、ファミリーシップ宣誓制度やレインボー交流カフェ、まちづくり出前講座など古賀市の取り組みの紹介があった後、ワークショップがスタート。

今回のワークショップは、 LGBTQ+当事者一人一人をそれぞれ 1 冊の「本」に見立て、自身の経験やストーリーを「読者」となる参加者の前で語り、共有し、対話するという「ヒューマンライブラリー( 対話型ワークショップ)」形式で開催。

「ヒューマンライブラリー」の「本」役として今回参加した LGBTQ+当事者は3 名。

本役の話し手を、それぞれ数名の参加者が車座で囲み、ヒューマンライブラリー(対話型ワークショップ)が始まりました。

時には胸が締め付けられるような、またある時には深い共感を抱かざるを得ないような、それぞれの深いストーリーが語られていました。

ここではリポーターが実際に参加して聞いた3 名の話を要約して紹介します。

【ヒューマンライブラリー①】
北野輝稀さんの話
昔から女性に好意を持たれることや、かっこいいと言われることがうれしかった。ある女性から告白されたことをきっかけに付き合うことになり、レズビアンであることを自覚する。当時は性転換などの知識がなかったので、レズビアンとして生きていくのだと思っていた。しかし、自分の中で腑に落ちないところがずっとあった。それからしばらくして、当時付き合っていたパートナーに「あなたはどうなりたいの」と言われ、自分は家庭を築くことに憧れていたことに気づかされる。そこから性転換手術について知識を深め、タイで手術を行うことを決意。「人間には誰しも男性性と女性性があり、その割合が個人によって違うだけ」。そんな感覚を得てからとっても楽な気持ちになった。


【ヒューマンライブラリー②】
雨谷里奈さんの話
「ずっと、居場所を探していた」という雨谷さん。
学生時代は「LGBTQ+ は身近にはいない」と孤独を感じ、無理やり周囲に合わせていた。ある時、ニューヨークを訪れた際に、LGBTQ+ の人たちがたくさんいて、みんな当たり前のように暮らしている世界があることを実感。その経験が自分の自己肯定感を高めるきっかけとなった。そこから様々な国のLGBTQ+ イベントを見て回った。中でも一番印象的だったのが、LGBTQ+ への理解が深い、オランダのアムステルダムや北欧各国を旅したこと。警察官も一緒になってパレードに参加していたことは衝撃的だった。「世界には、こんなにも自然に生活している性的マイノリティの人たちが、たくさんいるのだ」ということに気が付き「自分の居場所は自分で探す」と決意。自分が見て感じた経験を多くの人に見てほしいという想いからフォトグラファーに。パートナーとの日常生活をSNS で発信したり、写真の個展を開いたりして、交友の輪を広げている。


【ヒューマンライブラリー③】
桂(けい)ちゃんの話
昔から夫婦が同じ苗字になることに疑問を持っていたという38 歳のヘテロセクシュアル(異性愛者)。29 歳の時まで一般男性と付き合っていた。FTM(身体的な性が女性で、性自認が男性)の方に対しても普通に男だと認識していた。カミングアウトしたとき驚かれたけど、今は認めてくれている。これまでFTMの方とお付き合いをし、パートナーシップを結ぶこと2 回。男性が好きとか、女性が好きというより、その人の存在自体が好きな感覚。特別なことを求めてるわけではなくただ認めてもらいたいだけ。訪問看護の仕事をしていて、職場にはすでにカミングアウトしている。パートナーシップ制度は保険金の受領や、病院での保護者としての付き添いはできるが、基本的には法的措置ではないので、やはり不安な気持ちがあるのも事実。LGBTQ+ という言葉すら知らない人がまだたくさんいる。どんどん発信していって、こういう人たちも普通であるということを分かってもらうことがとても大事。また一方で、古賀市のように政府機関や自治体が主体となって発信して広めることによって「国側がやってるからこれも大事なこと」と認識させることも重要。一般市民もしくは普通の人間ならみんな当たり前に受けるべき権利ということを行政の力で知らしめる(差別しようとする人に警鐘を鳴らす意味)ことも大事。

田辺市長も参加者の一人として輪に加わり、みんなの話に耳を傾け、意見を交わしていました。

そして、LGBTQ+ 当事者と直接対話することで多くの気づきを得た参加者からは、様々な質問や感想が出ていました。ここではその一部を紹介。

■Q&A

Q. 両親へのカミングアウトを行っているが、事前に両親は気づいていたと思うか?

A. 両親も気づいていたと思う。小さいころから長い髪がすごく嫌ですぐに切ったりしていたし、スカートを履くのもすごく嫌がっていた。けど、いざカミングアウトしたときには母親はなかなか受け入れない状況ではあったようだった。そこであえて家を出て、距離を取った。その後、徐々に母親も受け入れてくれるようになった。意外にも、父親ははじめから受け入れてくれた。

Q.(LGBTQ+ であるかどうかではなく)自分の子どもに対して、どのように接することが良いのか?

A. 子どもに対しては、男の子だからとか女の子だからといって、選択肢を与えないようにするのはよくないと思う。男の子だからランドセルは黒にしなさいとか、女の子だからスカートを履きなさいとかは、しないようにしてほしい。子どもに自由に選択肢を与えてほしいと思う。


■参加者感想

・A さん
自分の子どもが最近、自身のセクシュアリティについてカミングアウトした。もともとは内気な人見知りの性格だったのに、カミングアウト後は、見違えるほど積極的で活発になり、ひとりで国内をヒッチハイク旅行したり、海外一人旅をしたり、その変貌ぶりを驚きと共にうれしく思っている。子どものカミングアウトに対して「親がどう受け止めるのか」。それがとても大事なことだと思う。

・B さん
終了後に感想を求めたが、「軽々に、自分が話せることではない。いままだ咀嚼中」とのこと。誠実さが伝わってくる感じ。

・C さん
特に印象に残ったのは「認めてもらうために頑張るのは違うと思う」という言葉。これまで当事者の方々は、たくさんのLGBTQ+ の活動を行っているが、そもそも多様性が当たり前の世界であれば、活動そのものをしなくてもよかったのではないかと改めて感じた。誰が誰を好きになろうが関係ないと思うし、自分の子どもがそうであってもすぐに受け入れられると思う。子世代も親世代もLGBTQ+ に関する知識を高めることが重要だと思うと言っていた方もいた。そんな理想の世界が築けるように、自分もなにか力になることをできればと思った。

・D さん
古賀市役所人権センターの方の話の中で、「私たちはなにかのサービスを求めているわけではなく、認めてもらいたいという思いがある」というLGBTQ+ 当事者の方々の言葉があった。社会からサービスを受けることが目的ではなく、認めてもらえることが、自分たちの存在意義を示すことになっているのだと感じた。また、当事者の方の話の中で、共通していたのが「両親へのカミングアウト」が最大の難関だったということ。今回参加する前に、もし自分が当事者になっていたとしたら、どこか後ろめたさを感じていたのかもしれないと思った。世の中が多様性についてもっと当たり前の感覚になっていれば、カミングアウトも自然とできるようになっていたかもしれないと感じた。

・E さん
LGBTQ+といってもそのあり方は多種多様。まだまだ勉強が必要だと実感した。当事者は特別な扱いをされたいわけじゃなくて、みんなと同じ権利を受け、好きな人とずっと安定的に暮らしていきたいだけ。結局ちょっとずつでもいいから発信していくことがとても大事だと感じた。これからもこういうみんなでの意見交換や情報交換、率直な話を聞ける場がどんどんできてほしい。そして、その理解が当事者や当事者家族だけではなく一般市民まで広まってほしい。


そのほか、多様な人たちとの対話を通して、LGBTQ+に関する知識を広め、自分自身の考えを深める機会になったのはもちろん、すべての人が快く生きて行ける世界を実現するために「自分には何ができるだろうか」と考えるきっかけになったという声がたくさん上がっていました。


今回の参加者の中には「たまたま『快生館』を仕事で訪れた際に、このイベントのことを知り、自分がこれまで関わってこなかった世界なので“知りたい。勉強したい”という思いで一人で参加した」という方も。

理想の世界への第一歩は、その輪の中に参加してみることから始まるのかもしれない。
今後も古賀市では様々な取り組みが行われていくとのこと。
機会があればぜひ参加してみよう!

URL:https://pridemonthkoga.peatix.com/

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