「指先で生み出す」(福岡県鞍手郡鞍手町)
「水引」といえば、結婚式のご祝儀袋を「紅白で飾る紐」のことを思い出す人も多いだろう。
しかし今、その水引が新しい形で、結婚式で使われていることをご存じだろうか?
鞍手町出身の石井麻子さんは細い指先から、
これまで平面だった水引を立体に変えていく新進気鋭の作家だ。
配色やデザインも個性的で、水引で作るピアスなどのアイテムが女性を中心に人気を集めている。
その作品たちの中でも特に目を引くのが「髪飾り」だ。
結婚式や成人式などで、水引の髪飾りをオーダーする人が去年から増えたという。
赤と白の髪飾りを実際に見ると、水引で出来ているということに感動を覚える。
花びらのように広がる水引の曲線は、ひとつひとつ、丁寧に引っ張られて、
石井さんのイメージする形に変化していく。
「水引は人の手じゃないとできない、機械化することは難しい」と話す石井さん。
確かに、指先の力加減一つで水引の曲線を生み出す技は、
あまりにも繊細な技術で、見ているだけでハラハラしてしまう。
そんな石井さんが未来に残したい風景は、「北九鞍手夢大橋」だ。
鞍手町と北九州市を隔てる遠賀川に、2015年に悠然と架かった夢大橋。
この橋のお陰で、鞍手町にある「くらて学園」で、
石井さんが開催する水引教室に通う北九州の生徒さんが、
前よりも早く、気軽に鞍手町に来ることができるようになったという。
鞍手と北九州を結ぶ夢大橋。それは町と町を結ぶ結果となった。
同じように、水引にも「人と人を結ぶ」という意味があるそうだ。
夢大橋のように、石井さんの水引もこれから多くの人を結びつけるのだろう。
※この記事は2022年の情報です(「STORY」10月16日放送)。