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「命を映しとる」(福岡県春日市)
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10代にわたる波佐見焼の窯元にルーツを持ち、
学生時代に「ギリシャ彫刻」に深く心を揺さぶられた福重英一郎さん。
無彩の白磁に彫刻を施し従来の焼き物のイメージにとらわれない作風を確立して、
独自の世界観を表現する磁器彫刻作家となった。
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「私が作るものは“形”で完結している」
英一郎さんの陶磁器作品の特徴は模様がないこと。形の美しさこそが重要で、模様はいらない。
立体造形の美を追求すると自然とそんな作品が生まれてくるという。
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頭の中に描いているもの、それが動物や植物の場合、生命感を大切にして
生き物に共通した普遍的な美を抽出して再現するように作り上げる。
まさに「命を映しとる作業」だと語る。
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そんな英一郎さんが未来に残したい風景は「白水大池公園の自然」。
住宅街が多い春日市にとって貴重な自然が集まるスポットで、
市民の憩いの場として広く親しまれている。
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自然を感じながら歩くのはもちろんだが、動物、特に犬・猫が大好きな英一郎さんにとっては、
散歩している犬に触れ合うことができる癒しの天国。
一度スイッチが入ると時がたつのも忘れて作陶の世界に没頭してしまうので
心が開放できる数少ない場所だという。
※この記事は2022年の情報です(「STORY」10月2日放送)。