【打刃物職人❶】「奇跡の包丁」 向 俊征さん
2026年03月15日

佐賀県唐津市加部島には、30年以上続く向刃物製作所があり、向俊征(むこう としゆき)さんが、最高級と評される水本焼和包丁を作り続けています。

俊征さんが、本格的に包丁の製作をはじめたのは、今から20年ほど前のことでした。
“至高の切れ味”と評された父・米雄(よねお)さんを師として、職人としての研鑽を積んできました。
向家は元々、包丁製作の本場である大阪府堺市で包丁鍛冶を営んでいました。
平成元年に呼子大橋が開通したのを機に、米雄さんの地元である加部島へ移住。
15歳から仕事を始め、昨年9月85歳で亡くなるまで、米雄さんの包丁を求めて、全国から料理人が加部島を訪れていたそうです。
俊征さんに対して、師匠である父は、「見て覚えろ」というばかりで、亡くなるまで一度も褒められたことはなかったそうです。

向刃物製作所の水本焼和包丁は、鋼だけで作られ、その硬度と鋭い切れ味が特徴で、全国の料理人に愛用されています。
手作業にこだわり、特に焼き入れは、日本刀製作と同様に、800度に熱した鋼を水で急冷却する高度な技術が用いられます。
その究極の切れ味を求めて、全国から人々が加部島を訪れ、“奇跡の包丁”とも呼ばれています。
一般的な流通は、ほぼされていません。

俊征さんが未来に残したい風景は「呼子大橋」です。
この橋が架かっていなければ、今の生活はなかったかもしれないと考えています。
風の見える丘公園から見える海、島の畑、そして呼子大橋の景色は、父を思い出し、初心に戻れる場所だそうです。
「まだまだあかんね、ボチボチやっていきます。」と、師である父から受け継いだ技を未来につなぐ決意を語っています。