【かまぼこ職人❶】「旦過市場と歩んだ100年」 森尾和則さん
2025年11月30日

小倉北区で100年以上、かまぼこ店を営む「小倉かまぼこ」。
北九州市が誇る歴史ある市場、旦過市場が立ち上がったのが大正2、3年頃といわれており、大正9年からこの市場と共に歴史を刻んできました。
そんな小倉かまぼこの三代目、森尾和則さん(77)は生まれも育ちも旦過。
市場の中に家があり、市場が遊び場だったと言います。
かつてはアーケード内を歩けないほどの買い物客で賑わったこの場所が大好きだったそうで、この地で小倉かまぼこの三代目として、食卓に並ぶかまぼこから、結婚式やお正月などの祝い事のためのかまぼこまで、多様な商品を作り続けてきました。

和則さんのかまぼこへのこだわりは、最高級のすり身を使うこと。
「お客様に喜んでもらいたい」その一心で、最高級のかまぼこを作ってきたのです。
一口にかまぼこと言っても、すり身の質、気温、湿度、加える材料の量、すべてに気を使わないとおいしいかまぼこはできません。
また、それらをコントロールできるのが、かまぼこ職人の腕の見せどころだといいます。
一般的に流通しているかまぼこと違い、最高級の食材を使った一つひとつが手作業。かまぼこを熟知する和則さんの職人技が光ります。

小倉かまぼこの名物商品といえば「カナッペ」。
昭和30年代に和則さんの母が考案し、今では旦過市場全体の名物としても有名です。
すり身をパンでまいて揚げる、当時としてはモダンな商品で、「パンも使ってるし、響きがいいからカナッペにしよう」と、フランス料理から着想を得て名付けたそうです。
古くからの常連さんも、子どものころおやつやお弁当の具材としてよく食べたと、今でも懐かしんでくれるそうです。
60年以上愛され続けたカナッペをこれからもいろんな人に食べていただきたい。
そのことが和則さんが77歳になっても工場に立つモチベーションなのです。

和則さんが未来に残したい風景は「旦過市場」の風景。
川にそって建てられたこの市場の床がまだ土のころから、毎日のように見ていたこの風景は、他の何にも代えられない風景だと語ります。
火災が発生したときは心中をえぐられる思いだったそうです。
「こういう時こそ隣同士一丸となって、協力していこうという思いになった」と和則さんは語ります。
復興のために市民有志も多く集まり、「旦過市場って愛されているんだ」と改めて気づき、感謝の気持ちでいっぱいになったそうです。
育った故郷であり、北九州の食の魂であるこの場所。
観光客の方のみならず市民のための市場として、これからも大切にしていきたいと、三代目は決意を固めています。