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薫の日曜日もダイジョブよ!

荒唐無稽だけど、なぜかリアリティが…映画「藁にもすがる獣たち」

2026年09月19日

[薫の日曜日もダイジョブよ!]

この作品のさらに詳しい情報はコチラ→https://warakemo-movie.com/

©曽根圭介/講談社 ©2026「藁にもすがる獣たち」製作委員会

 原作は、江戸川乱歩賞作家・曽根圭介氏の2011年の同名小説(講談社)だから15年前だ。それを読んでいない自分が試写会に参加するのは失礼かと思ったが、これが逆に大正解。事前情報がまったくなかったから面白さ倍増だ。

 物語が進むにつれて「この人物の運命は…」とか「今後の展開は…」などと予想したが、それらはことごとくハズれ、エンディングまで予測不能な展開が続く。

 脚本を担当した小林靖子氏は「今回の映画化にあたり、原作者サイドから大きく変えてほしいとのオーダーをいただき逆にプレッシャーを感じた」とのことで、原作をお読みになった方も「あのシーンの文章がどんな風に映像化されているか…」という楽しみ方があるだろう。

 予告編は「ネットカフェの客が置いていったボストンバッグを開けたらなんと1億円の現金が!」だが、それをめぐる単なるドタバタ劇ではない。

 昔からよく言われる「悪銭身に付かず」とか、ある意味での「勧善懲悪」の物語だ。

誰のものかわからないボストンバッグの1億円を見つけた寛治(鈴鹿央士)は、ある大胆な行動に…。

 鈴鹿央士が演じる寛治は、あまりパッとしない学生YouTuber。当然、暮らしが成り立たないからネットカフェでアルバイトをしている。

 ある日、その店から逃げるように去っていった客の個室にボストンバッグの忘れ物。好奇心から寛治が開けてみると中には1億円の現金が…って枚数を数える風情はなかったのでかなりアバウトな導入部。

 しかし脚本が上手いのはここから。案の定、ひと癖もふた癖もある怪しい人々が登場するが、いずれも当初は「その札束とのつながりはない」設定なのだ。

 小林靖子氏は劇場映画の『映画刀剣乱舞-継承-』『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』『岸辺露伴は動かない 懺悔室』などを手掛ける一方で『スーパー戦隊シリーズ』や『仮面ライダーシリーズ』といった特撮テレビドラマも担当する“脚本執筆のプロフェッショナル”という印象。

 本作について「邦画ですが泣けません。恋愛もありません。感動もありません。心に一切負担をかけない映画です」と語るが、ズバリその通りで「全米が泣いた!!」的な映画が苦手な方にはピッタリの作品だ。

謎の女“し~な”役は森七菜。あの『国宝』の演技からは想像できないキャラクターで…。

 「怪しい人々」のキャスティングも秀逸。

 昨年、配信ドラマ『死ぬほど愛して』(ABEMA)』に主演、俳優活動を再開した成宮寛貴。TVドラマ『相棒(テレビ朝日系)』の甲斐享役は2012年から15年なので、もうそんな時間がたったのかと感じた。彼は「骨の髄まで悪ではない悪人」という複雑な人物を好演していた。
 
 TVドラマや劇場映画だけでなくバラエティ番組でもおなじみのMEGUMIは、これまでの印象とは違う「 スネに傷を持つ」キャラ。

 小手伸也が予想通りの「怪演」を見せれば、お笑い芸人の青木マッチョが吉本所属とは思えないムードを醸し出す。

 『国宝』で日本アカデミー賞優秀助演女優賞の森七菜に至っては、同一人物とは思えない変身ぶりで、高畑充希と寺島しのぶ に並んでの受賞にもうなずけた。

 寛治のおばあちゃん・富子を演じる風吹ジュンが重要な役割を果たす。劇中で「台所の火を消し忘れることがある」と示唆されるが、これが後から重要な伏線だとわかる。

 いずれもご本人のこれまでのイメージとは違う「アクの強さをことさら強調した演技」が目立つが、それは城定秀夫監督のこの言葉でピンときた。「かつて自分を楽しませ、励ましてくれた数々の娯楽映画への敬意をこめて、なりふり構わず面白いことを沢山やらせていただきました」…と。

 終盤に登場する「昭和の有名な娯楽映画」の映像がその最たるもので、監督が持つサスペンス&アクション映画への深い愛情が伝わってくる。

成宮寛貴が演じる江波戸良介の設定は、かなり荒唐無稽なのに不思議な説得力があって…。

 本作は1億円の札束をめぐるサスペンスでありアクション映画だが「もしかしたら明日には実際の事件として起こるかも…」と感じられた。

 それは、描かれる「怪しい人々」の存在に説得力があったからだ。彼ら、彼女らから伝わってくるのは、ズバリ“トクリュウ”のにおい。ほぼ毎日見聞きする“匿名・流動型犯罪”のニュースにある「冷静に考えたらそんなことできるわけないだろ!」という行動に自らハマっていく。

 強そうに見える獣が、ピンチに陥って流れてきた藁をつかんだものの暗い水の底に沈んでいく姿は、ひと昔、いやふた昔前ならツッコミどころ満載だったが、現代社会のすさんだ風景がそれに追いついたかのごとくリアルだった。

寛治の祖母・富子を演じる風吹ジュンは、それが演技かどうか最後までわからない演出で…。

※この作品は9月25日(金)からT・ジョイ博多、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、ユナイテッド・シネマ福岡ももち ほかでロードショー公開です。

※小学生の観覧には、親または保護者の助言・指導が必要な「PG12」指定作品です。

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