「なるほど!そういう演出もアリか!!」と思いましたよ。 映画『大きな玉ねぎの下で』
2025年02月07日
[薫と有紀の日曜日もダイジョブよ!]
この作品のさらに詳しい情報はコチラ→https://tamanegi-movie.jp/

Z世代を除く日本人のほとんどが…いや、その世代でも音楽ファンであればよくご存じの「大きな玉ねぎの下で」。爆風スランプが今から36年前の1989 (平成元)年にリリースした有名なラブソング。それをモチーフにした実写映画だが、映像化するには大きなハードルがあったはずだ。
念のため、その歌詞を確認しておくと…
※主人公の男性はペンフレンドとの間で「文通」をしている。
※二人とも音楽ファンで、同じミュージシャンが好きな様子。
※彼はそのミュージシャンのライブチケット2枚をゲットし彼女を誘う。
※コンサート会場は「大きな玉ねぎ」と関係がある。
※ただ、二人の恋の結末は悲しいものになった…という内容。

この歌詞にある最大のハードルは「文通」。確かに80年代までは少年・少女雑誌や音楽誌の終盤ページに「ペンフレンド募集」のコーナーがあったが、これだけ個人情報の扱いが高度になった現在ではまさに「死語」。いったいどうやって描くのか…その回答は映画館のスクリーンでご確認いただきたい。
そのハードルを越えるために本作中には“ある特殊な演出”がある。ここで書くとネタバレになるので控えるが、ヒントくらいはいいだろう。
それは「複数の時代、複数のカップルで、複数のエピソードがいれかわりたちかわり展開する」というもの。だから「大きな玉ねぎの下で」も爆風スランプのオリジナルはもちろんのこと、2001年生まれのシンガーソングライター“asmi(あすみ)”によるカバー・バージョンも登場する。

主要な舞台は「文通」なんて文化のない令和の日本。
神尾楓珠が演じる堤丈流(つつみ・たける)は大学4年生だが、現実的な就職や将来の目標に対する考え方があやふやで、優柔不断で頼りない人物として描かれる。
一方、桜田ひよりが演じる看護学生の村越美優(むらこし・みゆ)は地に足をつけて病院での研修をこなすしっかり者の印象。
そんな主人公の二人は、あるツールによってつながっていて、会ったことはないけれどお互いの人柄は理解しているという設定だ。
そこに江口洋介、飯島直子、西田尚美、原田泰造といったベテラン俳優陣がからみ「なるほど!そういうことか~」といったハートウオームなお話が展開する。

最大の収穫は主人公を演じた神尾楓珠だ。思春期以降の男性が必ず経験する“葛藤”を演じきっていた。
特に母親に対する“照れ”のようなものを表現するのは難しい。それを彼はいとも簡単にやってしまった…というよりも本人の“素(す)”ではないかと思えるほどだった。
しかも、あれだけのイケメンなのに、それを懐疑的に感じているように見せるなど、人柄の良さがにじみ出る好演だった。

先ほど「本作の映像化には高いハードルがある」と書いたが、今回のように“ある特殊な演出”を思いつけば、映画化できるラブソングはまだ山ほどある。たとえば…
「サボテンの花」チューリップ(1975年 作詞・作曲:財津和夫)
「君と歩いた青春」風(1976年 作詞・作曲:伊勢正三)
「さよなら」オフコース(1979年 作詞・作曲 ::小田和正)
「翳りゆく部屋」荒井由実(1976年 作詞・作曲:現在の松任谷由実)
…と書いてきて、自分の“昭和のオジサンぶり”を痛感した次第。
※この作品は2月7日(金)からT・ジョイ博多、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、ユナイテッド・シネマ 福岡ももち ほかで全国ロードショー公開されます。